あすなこ白書

日本のドラマっておもしろい!

2024.3.30

ついにこの日が来てしまった。2024年3月31日、Sexy Zoneという名前が終わり、私が大好きな中島健人さんがグループを脱退してしまう。どうしようかと迷ったが、後にも先にも私のアイドルオタク人生において、こんなに衝撃的なことはなく、周りには常々「最後の担当は中島健人」「オタク人生の墓はSexy Zone」といっていたので、なによりも自分のために残した方がいいんじゃないかと思い、ドラマコラムの原稿との間にこの文章を書いている。セクゾと私については、過去にも書いたことがあるのでよろしければ。

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先に断っておくと、私は彼の決断について、あえて“脱退”という表現を使う。

2024年1月8日、そのとき私は、遅れに遅れた2023年ドラマの総括スペースをしていた。いつもヒイヒイしながら年末にブログで年間ベストを更新しているのだが、今年は開き直って年始に更新してしまい、そのランキングにあわせての解説&フォロワーの年間ベストを教えてもらっていた。そのときのことは忘れもしない。スペース開催時のコミュニケーションは、古の掲示板方式をとっているのだが、私が中島健人担だと知っているフォロワーたちから「あすなこさん…」「あすなこさんニュース見て…!」「あすなこさんケンティーが…!」と、不穏な書き込みがつづいた。そこでニュースの内容までを言及する人は誰もいなかった。いま思えばすごい配慮だ、ありがとう。

そのとき私はというと、不謹慎なことを言ってしまうが、真っ先に“死”を連想した。これはなぜかというと、今まで11年ほど彼を応援してきた私の人生において、中島健人=グループ脱退という考えが過ったことが、一ミリたりとてなかったからである。だからマジで死んだんじゃないかと心臓がバクバクした。「えなになにこわいこわい」「えーなにこわい」「みんな一緒にみよう」とフォロワーたちに語りかけながらスマホで検索してみると、「中島健人3月でグループを卒業」という文字列が飛び込んできた。

その瞬間「よかった死んでなかった…」と本気で思った。だって死んだと思っていたから。だけどすぐ後別の方向から心臓がバクバクしはじめた。いや、心臓はひとつしかないんだが、さっきのバクバクとは明らかに違う音がしていたのだ。

旧Jについては、明らかに潮目が変わっており、平野紫耀が脱退したあたりから「もう誰が退所してもおかしくはない」とオタクは口を揃えていた。私も同じようなことを思っていたのだけど、申し訳ないがどこか他人事であった。まあ誰が抜けてもおかしくはないが、セクゾに限ってはもうあり得ないと。数年前は菊池風磨さんが留学に行ってしまったら絶対グループをやめると思っていたので、頼むから留学しないでくれ〜〜〜と日々悶々としていたのだが、マリウスの卒業を見届けたいまの彼らに限っては大丈夫だと、なんの根拠もなく思っていた。

ニュースを見た私はスペースを一度中断したのだが、とにかく誰かとこの気持ちを分かち合いたいと、再びスペースをはじめた。そしたらリスナーの中にお友達がいたので、急に壇上にあげて、抑えきれぬこの気持ちとやるせなさをひたすら聴いてもらった。

人生の大きな決断をした自担に対して、私の第一声は「失望」だった。佐藤勝利という不動のセンターはいるものの、グループを牽引する健人がいなくなった後の穴はあまりにも大きい。マリウスの卒業という大きな別れをやっと乗り越えられて、メンバーもオタクも同じ方向をむきつつあったのに、どうしてこのタイミングなんだろうと思った。いまとなっては、彼がこの答えに至った背景をなにも考えず、自分の気持ちをそのまま口に出してしまったことを反省しています。

ただ、本当にショックだったのだ。2週間くらい前の年末の東京ドーム公演がほんとうに良かったから。マリウスの卒業から一年経って、ほんとうにほんとうに「ここからだ」と思った。ほんとうに良いグループになったと感じる公演だったから。ここから、ここから、セクゾは売れるんだと思った。

だけど、今考えてみれば、健人は……というより、彼らは何度も何度も「ここからだ」といわれては、その度に湧き上がる気持ちを、なにかに押さえられてきたのかもしれない。私が約11年ほどセクゾを見てきた中で、「ここからだ」と感じる場面は何度もあった。大きな苦難を乗り越え、その度に悲しいかな輝きを増す彼らの姿を見ては「ここからだ」と思った。久しぶりに5人体制に戻ったカラフルEyes、二年半ぶりに聡ちゃんが表舞台に帰ってきたとき、久しぶりに歌番組で5人揃った彼らをとき、11年かけて初めてドームに立ったとき、マリウスの卒業を美しく見送ったとき、そして2回目のドーム公演をみたとき。

しかし正直いうと「ここからだ」の後を感じた時間は、あまりなかった。それは彼らの人気がどうとかではなく、一難去ってはまた一難……の繰り返しで、どこから見ても燻りの時期の方が長かったからだ。

なので悲しいけれど、なによりも私が応援している本人がいいはじめたことなのだから、受け入れるしかないのかもしれないと思うようにした。これは他のファンの人も書いてあったけど、30歳を過ぎた身からすると、29歳と30歳に大きなものはない。29歳の私も、30歳以降の私も相変わらずドラマ漬けの生活を送っている。小学生の頃に思い描いていた30歳とは全く違っていて、28くらいの自分からずっと地続きのような気もするし。ただ、その変化のなさに後から気づくことはあれど、当時の私もなんらかの焦燥感を抱えていたかもしれない。それにとうに過ぎた側から、一生懸命考えて答えを出した人に向かって「そんなことないよ」というのも(物理的にはいえないけど)烏滸がましい気がする。

そんな風に一月末に区切りをつけて、残りはただただ与えられたものを有り難く受け取るようになった。まあ触れないようにしていたから、あまり実感がなかっただけかもしれない。それが2月後半に入り、中島健人最後のシングルでセクゾ最後のシングルにもなった『puzzle』のテレビパフォーマンスを見たときだけは、限られた時間の少なさをどうしても感じてしまい、なんでこんなことになってしまったんだろう……と、彼の選択を何度も嘆いた。彼を止めきれなかった周りの大人たちを何度も恨んだ。

4人での最後のテレビ出演になったミュージックステーションでは、彼の押さえきれないグループへの愛と、もうなにも隠そうとしない3人からの大きな愛を感じて、ただただ泣いた。なにか大きなものによってグループから引き離されているようにも見えたのだけど、彼にとっては抗えない「30歳」の区切りがまさしくその“大きなもの”だったのかもしれない。

というわけで、来ないでくれと願いつづけていた2024年3月31日がもうすぐきてしまう。私はこの日までに、ずっと出し損ねていた「Sexy Zoneの大好きな曲20選」というブログをアップしようと思っていたのだが、私が一方的に描いていたセクゾの概念が、もしかしたら彼を悩ませる一因(もちろん直接的なものではないけれど)になり得るかもしれない。今後もグループ活動をつづけてくれる3人の足枷になるかもしれないと思うと、怖くて出せなかった。ちなみに私が好きなのは「恋がはじまるよー!!」「High!High!People」「Silver moon」「Forever Gold」「King &Queen &Joker」です。

4月1日からグループ名が変わり、3人がどんどん新しい曲を出しても、そのシングルがいままでにないくらい爆売れしたとしても、再びドームにたっても、そして彼らのいまの夢である国立に立てた日が来ても。多くのファンは「Sexy Zoneから中島健人が抜けて良かった」と思うことはないだろう。おそらくそれは3人もそうで、名実ともに彼らが国民的アイドルグループになったとしても「ケンティーがグループを辞めてよかった」と思う日は一生こない。これで良かったんだと思うようにはしてても、中島健人がグループを脱退したことを喜ぶメンバーは絶対いない。

だからせめて、健人本人だけにはこの選択が間違いだったと後悔をしてほしくない。彼が振り返ったときに、いままで歩んできたSexy Zoneの13年間と同じくらい、これから歩んでいくソロでの道が輝かしいものであってほしいのだ。