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2021年ジャニーズ部門第三位頂きました!

 

 

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な、なんと劇場版『ルパンの娘』にドラマウォッチャーとしてコメントさせていただきました…!光栄すぎます!

『劇場版 ルパンの娘』絶賛コメント続々!!

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↑『真夏のシンデレラ』はまさかの寄稿依頼被りが発生しました。トンチキハプニング!

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YouTube、はじめました

明日菜子です。このたび、YouTubeを始めてみることにしました。YouTubeにチャンネルページを作って、そこに動画さえ投稿すれば、誰でもYouTuberとしての一歩を踏み出せるわけですが、思っている以上にいろんな人から「チャンネル開設おめでとうございます!」と言っていただけるので嬉しいです。動画を見てくれた人、いいねくれた人、チャンネル登録してくれた人、ツイートを拡散してくれた人、ありがとうございます!


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youtu.be

2017年からこのアカウントを始めて早8年、30代の自分がYouTubeを始めることになるとは思いませんでした。まあ、1クールに毎週ドラマを25本見るような狂人生活を8年つづけていることも想像できませんでしたが……。(私のTLにはたくさんいます)

周りに「YouTubeやってみなよ!」と言われつづけ、いざ動画投稿を始めてみたいま、「私はこの明日菜子というアカウントでなにがやりたいのかな?」とよく考えるようになりました。

そもそも明日菜子アカウントの誕生は、会社をやめて暇になったタイミングで、ドラマでも見ようかな〜と思ったことがきっかけです。たまたま見たドラマがおもしろくて(そのタイトルをド忘れしたのがマジ致命的)、他も見たら面白かった。いまのドラマって面白いんだな〜。友達も見てるかな〜と思って聞いてみたら、まったく見てなかった。じゃあ、これは?あれは?!と聞いても、まったく見てなかったんです。衝撃だった。もしかしたら、世の中でテレビドラマを見てるのは私だけなんじゃないか。テレビドラマってオワコンなんじゃないかと、あのときは本気で思ったのです。詳しくは『聞くCINRA』でお話しさせてもらっています。

open.spotify.com

あれから8年……(遠い目)最初は書くことでしかドラマのことを伝えられないと思っていたけど、座談会やったりPodcastやったり、今年はテレビやトークイベントにも出させてもらった。極めつけにはYouTubeチャンネル開設……!毎日時間に追われてゆく中で、この明日菜子活動は一体全体どこを目指しているんだ……!?と、ふと宇宙猫になる日もあります。

そんな中、「あたらしいテレビ」への出演が決まった前後くらいかな。「芸能人ぶりやがってw」みたいなマシュマロがきて、そんなことを言ってくる人がまだ私のアカウントを見てるんだ!??ツラ貸せ!!!と思いました(交差する別の気持ち)。

でも、ぶっちゃけ、有名になることが目的ならば、きっと他に良い方法があります。少なくともタイパを考えると明らかに悪い。それはきっとドラマだけじゃなく、映画も本も演劇も同じ。自分のポジションを得るためだけに、作品紹介や作品批評を選ぶのは修羅の道です。根底に「好き」がなければつづきません。もしくはそれと同じくらいデカい野心があればやれる……が、それはそれで相当大変です。

じゃあ、私はなにがしたいんだろう?私はやっぱり「誰かとドラマの話がしたい」のだと思います。たぶん8年経ったいまも、ドラマの話がしたくても誰ともできずにちょっぴり寂しい想いをしたあの時の私がいる。もしかしたら、あのときの私と同じように、寂しく思っている人もいるかもしれない。だからせめて私は、ドラマの話をできる人でありたい。周りにはドラマを語れる人はいないけど、あすなこがいるーーーー!!!的な存在でいたいのです。

直接会って言葉を交わすことは難しいけど、文章で、音声で、動画で、それが実現できたらいいなと思っています。そう思いながらずっとこんなことをやっています。オススメのドラマを紹介するのも、こんな傑作を見逃すなんて人生損だぞー!!という気持ちがあるのは大前提で、私自身が誰かの感想を聞きたいんだと思います。だから、一人でも多くの人にいろんなドラマを見てほしい。私のオススメで作品を見たあなたが、私と異なる気持ちになってもいいんです。だってそれが感想だから。

YouTube始めたことをブログにも一応書いとこうと思ったら、所信表明みたいになりました。チャンネル開設時はマメな動画更新が大切らしいので頑張ります><その前に今日締め切りの原稿がまだ終わっていないので頑張ります><><YouTubeに進出しても、明日菜子の野望は揺るがず一途に「フジテレビ批評出演」です!よろしくお願いします!

私が戦うべき人は、目の前にいるあなたではない(ドラマ『対岸の家事』感想)

2025年も折り返し地点になった。「6月」という響きにはまだしっくりきていないが、終盤に差し掛かった春ドラマを眺めていると、もうすぐ夏がやってくるんだなと思う。今年の春ドラマは良い作品が多かった。11年振りに幕があいた『続・続・最後から二番目の恋』(フジテレビ系)がなんといっても最高!千明(小泉今日子)たちの物語のつづきをリアルタイムで楽しめる喜びを毎週噛みしめている。『しあわせは食べて寝て待て』(NHK総合)も良かった。薬膳生活を勧める上質なグルメドラマだと思っていたが、最終話を迎えてみると、「思うようにたちゆかなくなってしまった人たちによる自己再生の物語」だったたことに気づく。飯島奈美さん監修のお料理には毎週食欲を刺激された。あと、『わたサバ2』がめちゃくちゃ面白いです。

そんな春ドラマの中で、TBS火曜22時枠『対岸の家事〜これが、私の生きる道!〜』が初回からずっとおもしろい。多部未華子演じる専業主婦・詩穂が、ワーママや育休中のエリートパパなど、立場も境遇も異なる“対岸にいる人”たちと出会い、ときにはぶつかりながら、それぞれの生き方や悩みに触れてゆくヒューマンドラマだ。原作は、2019年にドラマ化された『わたし、定時で帰ります。』の著者・朱野帰子による同名小説。働く独身女性と専業主婦、対極にいる存在をどちらも丁寧にすくい上げる朱野先生の絶妙なバランス感覚よ……!

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『対岸の家事』は、専業主婦の詩穂が、世に蔓延るあらゆる対立構造をなくそうと奮闘するドラマだと思う。ふと考えてみれば、世の中はどこもかしこも対立ばかりだ。「専業主婦とワーママ」「既婚と独身」「男と女」「持つ者と持たざる者」――どうして私たちは、いとも簡単に“こちら側”と“あちら側”に分かれてしまうのだろう。そんなことを考えていたドラマの第八話。育休取得中のパパ・中谷さん(おディーン様)が、夫・虎朗(一ノ瀬ワタル)と喧嘩をした詩穂に、こんな言葉をかける。

「虎朗さんは店長でもあり、管理職でもある。家の中ではただ一人の稼ぎ手。もしいつか自分が倒れたら……という重圧をいつも感じているでしょう。もちろん詩穂さんにも苺ちゃんを育てるというプレッシャーがある。ですが、その辛さは互いには分かり合えない。 だって、お互いに経験していない。知らないんですから

そう、私たちは互いのすべてを知らない。経験していないのだから、相手のすべてを汲み取るなんて、本来は不可能だ。けれど日々の忙しなさや世知辛さに追われるうちに、そんな当たり前のことさえ忘れてしまい、いつの間にか、私たちは既存の対立構造にズブズブと足を絡め取られているのではないだろうか。

そもそも「このドラマすげえ……」と最初に思ったのは、志穂とワーママ・礼子(江口のりこ)の出会いを描いた第一話だ。子育て支援センターで孤立していた志穂に、礼子が気を遣って声をかける。「村上さんはもう決まった?」「え?」「ウチはやっと決まってさ、ほっとしたよ」「ああ、夕飯?献立の話ですか?わかります、悩みますよね。毎日のことだし」「違うって、保育園よ保育園」専業主婦とワーママ、立場の違いがふとした拍子に顔を出し、空気が次第にピリつきはじめる。その緊張状態はなんと2年もつづくのだが、思い詰めた表情で屋上にいた礼子を志穂が助けたことで、二人は“真のママ友”になるのだ。

専業主婦とワーママの対立ネタなんてごまんとあるだろう。なんならその軸で連ドラが一本作れたかもしれない。けれど『対岸の家事』はそうしなかった。志穂と礼子が第一話早々に手を取り合ったのは、ここで二人が対立することに意味がないからだ。むしろ、二人が手を取り合い、この厳しい現実をともに乗り越えてゆかねばならない。戦う相手はもっと先にいることを『対岸の家事』は示している。

このエピソードで、自分が会社に勤めていたときのことを思い出した。私は一年前に会社をやめた。当時は「ドラマウォッチャーの仕事に専念するためですか?」とよく聞かれたものだが、シンプルに会社がイヤでやめた(ドラマの仕事はください)。リファラルで採用された会社が悲劇的なことに合わなかっのだ。ちなみに紹介してくれた友人は私より先にやめたので、まあ、そういう会社なんだと思う。

だが、そんな会社の中にも、ご飯に行ったり飲みに行ったり仲良くしてくれる人はいた。その人は私と同世代で、小学生の息子さんを育てるワーママだ。おそらく働かなくても生活できるんだろうけど、働きたい気持ちが強かったのだと思う。友人がいなくなったクソッタレな会社の中で、唯一会話ができる貴重な存在だった。

けれど、部の中枢を担っていた友人が抜け、その代わりに彼女が管理職ポジションになった頃から、私たちは飲みに行かなくなった。あんまり話さなくなった。いったい会社のなにがイヤだったのか。その理由は山のようにあるんだけど、決定打は労働環境が大きく変わったことだ。もともと週3出社&週2在宅のハイブリッド勤務が、ある日を境に毎日出社することになった。コロナ禍を経て日常が戻ってきたいま、それは仕方がないと思うんだけど、毎朝8時出社なのがほんとうにイヤだった。というか、ハイブリッド勤務の時は9時出社だったのになぜ……?別に早朝に出社しないとやれない仕事ではない。その裏側にはおじさん幹部たちからの「社員に忠誠を誓わせたい」というエゴイズムだけが垣間見えたのだ。

マネージャーになった彼女は、その決定を我々一般社員に伝える際に「子どもがいるなど特別な事情がある人は午後出社が可能です」といった。その言葉はきっと、おじさん幹部から彼女に伝えられ、そのままの言葉を我々に伝えただけだろうが、子持ちである彼女から発せられたその文言はだいぶグロテスクな響きに聞こえた。あらゆる理由で子どもを諦めた人や子どもを持たない選択をした人が聞いたらどう思うんだろう……というか、なぜ元気な独身が毎朝8時出社をせねばならない!!???(本音)その翌日からいよいよ地獄の8時出社は始まったのだが、彼女は週の半分くらい、育児を理由に午後から出社していた。部内で午後出社をしていたのは彼女だけだった。

そのとき、まさに私は『対岸の家事』に登場する礼子さんの部下で独身の今井くん(松本怜生)のように「子どもがいるとか知らんくね……?」「午後出社の理由はほんまに子どもなんか」「じゃあペットを飼っている独身のことは考えてくれるんか(私は飼ってないけど)」と思ってしまったのである。ひとつ言っておくと、私は小さなお子さんを置いて、彼女に意味のない8時出社を毎日してほしかったわけじゃない。会社と育児の両立がどれだけ難しいかは彼女とよく話していたから知ってる。ただ、彼女がこの体制に疑問を抱かず、それを受けいれていることが、どうにも不思議だったのだ。しかも結局のところ、午後出社した彼女はMTGに追われ、誰にも任せられない仕事を夜遅くまでやっていることも多かった。

結局、彼女とは会社を辞めてから疎遠になった。けれど、一管理職である彼女に、多く求めすぎていたんじゃないかといまは思う。少なくとも、私が憎むべきは彼女じゃなかった。もっともっと、その先にいたのだ。でも当時の私は、おじさんたちが仕立て上げた「ワーママvs独身」の構造にすっかりハマってしまった。

「結婚してるかしてないかで、何で女はこんなにいがみ合わなきゃいけないんだろうね。子どものころはさ、みんな同じただの女の子だったのにね」――これは、2012年に放送された『最後から二番目の恋』のセリフだが、2025年のいま、時を経てなおのことウッと刺さっている(そして10年以上前にこんなセリフをさらっと書いた岡田惠和マジすごい)あのとき、私なりに彼女にできたことが何かあったんじゃないかと、いまもときどき考えてしまう。

『対岸の家事』は、そんな異なる立場や状況にいる人たちの気持ちを、丁寧に隅々まで言語化してくれる“現代らしい”ドラマだ。ドラマの主人公みたいに、他人の事情に踏み込んでバッググラウンドを聞き、ましてやその人をエンパワメントできるような時間も、労力も、余裕もない。だから私たちには、物語がある。疎遠になってしまった彼女も、忙しない日常のどこかでこの作品を目にしているといいな。きっと『対岸の家事』のようなドラマが、世の中を変えてくれるのだと、私はそう信じている。

生産性のない私の物語『スロウトレイン』

いきなりですが、私は結婚願望はあるけど、子どもを望んでいない人間である。子どもは好きな方だし、子どもに好かれやすい方だとも思う。だけど、昔から自分が母になる想像がつかず、私はずっとやりたいことをやって生きていくんだろうなと思っていた。そしてその気持ちは30代になってからより強くなった。他にも子どもを望まない理由はあるけど、ひとまず割愛。

そんな私は一人っ子で、昔から「親が死んでしまうと一生ひとりぼっちだ!」という想いが強かった。だから結婚したい。そう話すと「子どもが欲しくないならパートナーシップとかでもいいんじゃない?」と既婚の友達に言われたことがあった。結婚はいろいろ煩わしいこともあるんだよ、と。日本には、結婚したいパートナーがいても婚姻制度を使えない人たちもいる。パートナーシップを結んで仲良くやっている人たちもいる。そのなかで私がひどいと声を荒げるのは烏滸がましいかもしれないけど、子どもを産まないなら婚姻制度を使わなくてもいいんじゃない?と言われるのは(そこまで言ってないけどね)なかなか横暴に感じた。心無い政治家とかは私のような人間を「生産性がない」というのだろうか。

という前置きから、2025年の新春に放送されたスペシャルドラマ『スロウトレイン』について語りたい。あの野木さんがホームドラマをやるという第一報が流れた時から、すごく楽しみにしていた作品だ。

松たか子と多部未華子と松坂桃李の3姉弟は、幼い頃に両親と祖母を交通事故で亡くしている。名字は「渋谷」だけど鎌倉に住んでおり、はこねえ(松たか子)はフリーの編集者、うーちゃん(松坂桃李)は江ノ電の保線員、みゃーこ(多部未華子)はカフェで働いていたのだが、法事の帰り道に突然「韓国に行く!」と言い出した。そのみゃーこの一言をきっかけに、いままで一緒だった三姉弟にいよいよ人生の分岐点が訪れる、というストーリーだ。ここからネタバレ全開で書くので、まだ見ていない人は読まないでください。

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すごく楽しみにしていた作品だったが、期待値が高かったこともあり、最初はあまりピンとこなかった。主人公が松たか子だからというのも大いにあるが、こまごまとした会話の応酬がどうしても『大豆田』と重なった。松たか子&池谷のぶえのいわゆる中年女性のパートはめちゃくちゃ良かった。だけど、松たか子に気がありそうに見えた拗らせ作家の星野源が、実は弟である松坂桃李の恋人だということが発覚して、それはさすがに狙いすぎじゃないかと若干引いた。良識あるファンが「妄想も程々に」と諭すツイートを見かけたけども、あれはどうぞ消費してくださいと言わんばかりの組み合わせで、作り手の意図とキャスティングが合ってないんじゃないかと思った。日韓カップルの描写はものすごくリアリティーがあったが、そもそもなんで日韓カップルを出そうと思ったのだろう。多様性の象徴かなぐらいに思っていた。

こんな感じで私はあまり要領を得てなかったのだけど、中盤に登場した婚活中の宇野祥平がはこねえに対して「あなた孤独じゃないんですよ。だから簡単に言えるんです、一人でも生きていけるって」といきなり30代独身一人っ子の気持ちを代弁してくれたもんだから、そこから思わず前のめりになった。「なんで一人がいいの?」と「なんで結婚したいの?」も同じ苦痛があると思う。はこ姉のような人のドラマはあるけれど、「結婚願望があるのに『一人でもいいじゃん』と言われる人」の例はあまり見ないから嬉しかった。松たか子が元恋人の井浦新と別れた理由もおもしろかった。『海に眠るダイヤモンド』につづき、野木さんが“欲望のない若者”を描いていたことも興味深い。松たか子を通して、いたるところに野木さんのマッチョさが垣間見えていたのも面白かった。

そして私は、松たか子が亡き母に対して「私は子どもを残しません」と言い切ったラストシーンで、この作品のことを初めて理解できた気がした。これはいわゆる“生産性のない人”たちのホームドラマではないか。そういう心無いまなざしで見られたことのある人たちの物語なのではないだろうか、と。

もちろんこの三姉弟の未来がどうなるかはわからない。だけど、物語中で汲み取れる情報としては、うーちゃんは同性のパートナーと暮らすようになり、はこ姉は子どもを望まない人生を楽しく生きる。みゃーこは子どもを産む可能性はあるけれど、子育てをするとしても韓国だろう。平たく言えば、日本の出生率には貢献しない人だ。

そんな家族のカタチもある、と野木亜紀子は描く。父・母・子がちゃんと揃っていなくても、日本人と韓国人のカップルでも、同性同士の組み合わせでも。そして子どもを産まない決断をした女性の存在を認めてくれる。『スロウトレイン』はまさしくそんな作品だと思った。

三姉弟は異国の海岸で「家族ってなんなんだろうね」と語り合う。でもどんな言葉よりも、一見ばらばらそうに見える彼らが“家族”としてお正月の食卓を囲うラストシーンに励まされた。家族揃ってこのドラマを見ている人、「結婚はまだ?」と聞かれてゲンナリしている人、ひとりでこのドラマを見ている人……たくさんの人がテレビを見て、家族とはなにかを考える、考えさせられるお正月だからこそより一層、このドラマの意味を感じたのだ。

このドラマがすごい2024+あるふぁ〜

こんにちは〜!明日菜子です。現在12月30日です。やっぱり今年も追われて年間ベストを書いてきます。文章ぐちゃぐちゃですみません!

今年はリアルサウンドさんで年間ベストの記事を書かせていただきました。毎年楽しみにしていた企画だったのですごく嬉しかった!

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この記事の公開後にラスト100点満点を叩き出した『海に眠るダイヤモンド』の最終回があったり、まだ最終回を見ていない作品もありましたが、年間ベストはこの布陣です!強いていうなら記事執筆途中に大団円を迎えた『光る君へ』をどこに入れるか最後まで悩んだのですが……特別賞とさせてください……。

今年完走した作品は、テレビドラマ・配信・単発含めて全131作品。(かぞかぞは2023年作品にカウントしています、傑作!)今年は特に悩んだ。あくまで私の年間ベストなので、この記事を読みながら、ぜひあなたの好きなドラマに思いを馳せていただけますと幸いです。(コメント量は作品の評価に関係なく、記事を書いてない作品を多めにしました)BEST10完全版はぜひリアルサウンドさんの記事で!長いので目次置いときます。

・BEST10の+α

・お仕事のこと

・2025年にむけて

1位:仮想儀礼(NHKBS)

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粒揃いだった2024年ドラマ……年間ベストは『仮想儀礼』を選びました!日本のテレビドラマは……と宣うすべての人々に見せつけたい!「なにか面白いドラマない?」と聞かれるたびに毎回話題にあげていたオススメ作の第一軍です。すべてを失った青柳翔と大東駿介が金儲けのためにインチキ宗教を立ち上げる……これを聞くだけでもう見たくない?二人が立ち上げたツギハギだらけの「聖泉真法会」はご近所さんの支持を受け、どんどん成長し、次第に国政をも巻き込む巨大組織になります。そんなに上手くいくの?と思うじゃないですか。元都庁職員で市民の苦言やお怒りを毎日受け止めていた正彦(青柳翔)の当たり前のことしか言わない説法が悩める民たちの心にフィットするんです。集会所に毎回掲示されてる普通のことしか書いていない御言葉にもぜひ注目してください。あらゆる番組で「宗教とはなにか」を考えつづけたNHKの集大成。青柳翔と大東駿介が役者になってくれて本当に良かった、マルチ商法とかやってなくて本当に良かった。

2位:舟を編む(NHKBS)

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ドラマ『重版出来‼︎』が好きな人はぜったいに好き……というか『重版出来‼︎』が嫌いな人なんてこの世にいないじゃないですか。つまり『舟を編む』は生きとし生けるものすべてが好きな超正統派お仕事ドラマなんです!ここ数年一番メロい向井理もいます!!脚本は『あの子の子ども』や『しずかちゃんとパパ』の蛭田直美さん。蛭田さんは言葉使いの名手といいますか、とにかく一つ一つの言葉を丁寧に紡ぐ方なんです。たとえば第一話で使ったキーワードが後半にもう一度、二度出てくる。同じ意味のときもあれば、違う響きに聞こえるくらい意味が違うときもあったり。これを巷では伏線回収というのかもしれないけど、それ以上に蛭田さんが言葉を大切にしているんだろうなぁと思います。『舟を編む』の脚本、あらためて蛭田さん以外の適任はいなかった。そして2024年の主役といえば、杉咲花、河合優実の名前があがるでしょうが(異論ナシ)、忘れてはいけないのが池田エライザ!『地面師たち』『海に眠るダイヤモンド』そして『舟を編む』……三者三様のエライザが見れる彼女のポートフォリオ的ラインナップでありながら、どれも傑作!実力だけでなく作品の引きも良いのがすごい。いつか池田エライザさんの朝ドラもあるんじゃないかなと感じた一年でした。

3位:3000万(NHK)

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どこに出しても恥ずかしくない誇るべき日本のドラマです!私は『とらつば』で朝鮮人に対して差別的なまなざしを向けてしまうと打ち明けた後輩に、寅子が「でもあなたは踏みとどまれているじゃない」と言うシーンが好きなんですけど、『3000万』はまさに誰もが簡単に足を踏み外しそうになる罠が張り巡らされたこの時代に、どうやって踏みとどまるかがテーマになっていたように思う。

普通の人々が「自己責任」で犯罪者になるドラマ『3000万』の行く末 | NiEW

4位:ケの日のケケケ(NHK)

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令和に生きる私たちは“寛容さ”を求めているんだっけ?そんなことを思った『ふてほど』最終回のモヤを晴らしてくれた脚本家・森野マッシュのデビュー作。とにかく令和の話題作『ふてほど』と対で見てほしい作品なのです。「自分のご機嫌をとりながらこの世界と上手く付き合っていく」主人公の生き方もすごく令和っぽいと思った。

5位:燕は戻ってこない(NHK)

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『仮想儀礼』『3000万』に並ぶ強烈さ!貧困から抜け出したくて代理母に手を挙げた石橋静河、超エリートバレリーナの稲垣吾郎、血統至上主義の黒木瞳……唯一話が通じそうだった内田有紀も後半からアクセルぶちかましてもう終わり。信じられるのはマチュー(犬)だけ。

「はて?」が許されない『燕は戻ってこない』の女性たち 『虎に翼』と同時に描かれる意義|Real Sound

www.asunako-drama.com

6位:虎に翼(NHK)

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いま思い返してみても、あれだけ胸が高鳴った朝ドラの第一話はない!オープニングを一度も飛ばさずに見たのも初めてかも。一番好きなシーンは寅子が花束を渡さなかった穂高先生の祝賀会です。たとえ他の人からは「そんなに怒らなくていいじゃん……」ということでも、私たちは怒っていい。傷ついたときは悲しんでいいのだと、朝ドラヒロインの寅子を通して描かれたことがなんだか嬉しかった。穂高先生は味方のようで実は寅子の心を理解していない存在として置かれていたらしいんですが、小林薫の芝居が魅力的すぎて大好きになっちゃったよネ……!星航一は最後まで掴みどころがどこかわからなかったんですが、『ときメモGS』の住人だと思うと解像度が一気にあがった。なんで今年の流行語大賞「はて?」じゃなかったんです??

『虎に翼』であえて描かれた“欠点”とは…弁護士→裁判官になった伊藤沙莉「寅子」の“無自覚さ”が示したもの | 『虎に翼』の「はて?」を解く | 文春オンライン

7位:アンメット(カンテレ)

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『アンメット』の花ちゃんがかわゆすぎるせいで、杉咲花になりたい女が周りに爆誕。なれるなら私もなりたいですけど、インターネットに生息するコンテンツ語りたい女には無理だとわかっているので来世に期待します。『アンメット』はずーっと高いクオリティーを保ちながらも、最終回がいちばん面白かったのがすごい。役者演出部だけでなく、脚本の篠崎さんも素晴らしかった。『アンメット』を機にテレビドラマを見てみようかなと思った人が増えていたら嬉しいです。

「アンメット」綾野先生のナイスファイトに改めて感謝、二人は必ず幸せになる | ナタリードラマ倶楽部 Vol. 8

8位:Eye Love You (TBS)

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2024年のあすなこを象徴するドラマといえば誰がなんといおうと『Eye Love You』です。ヤフコメ民に「なんでこのラインナップで『Eye Love You』が入るんだw」と草生やされたとしても『Eye Love You』なんです!!見ているこちらが狂いそうになるほど二階堂ふみ×チェ・ジョンヒョプがお似合いなんです!!!こんなにどハマりした結果、どうか大好きなままで終わってほしくて、毎回手に汗握りながら見てました(そんなふうに見る作品ではない)テオが退職届を宅急便で送りつけた最終回以外は100点。それさえも第7話の温泉回でヤンモリ巻きした侑里さんに「ん〜ふふふっかわい・・ひひひ」とはにかむテオですべて許せます、ひひひ。テオ侑里ならびにふみヒョプ、永遠となれ……いつでも帰ってきてね……。

二階堂ふみ×チェ・ジョンヒョプ『Eye Love You』はなぜ視聴者の心を揺さぶり続けるのか|Real Sound

『Eye Love You』ロスからまだ抜け出せない! 中川大志“花岡”の幸せを見届ける続編を熱望|Real Sound

9位:全領域異常解決室(フジテレビ)

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粒揃いな2024年ドラマの中、どうしてもオリジナル脚本の『ゼンケツ』をTOP10に入れたかった……!すごくないですか、これオリジナル脚本ですよ……!??『ゼンケツ』は5、6話からが本番だとみな口を揃えていいますが、そこまで視聴者をぜったい飽きさせないという脚本家・黒岩勉の気迫をも感じた一作です。令和に藤原竜也に萌えを感じるとは思わなんだ……特大級の萌えをありがとう……。京都弁インテリメガネの炎使い溝端淳平(設定過多)を最終回だけで終わらせるつもりですか?

10位:Shrink~精神科医ヨワイ~(NHK)

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『Shrink』はこのドラマが放送されたあと、数年後もしかしたら数十年後に受け取る人のことまでをも考えて、作品をつくっていることがすごい。それが作品を見ていると伝わるんですよね。そしてあらためて中村倫也が上手い、芝居が上手い!!!全3話もちょうど良かった。岸辺露伴のように不定期シリーズ化を待ってます!

『Shrink―精神科医ヨワイ―』は“誠実さ”が詰まった実写化に 現代を生きるすべての人へ|Real Sound

中村倫也演じる弱井先生にまた会える日まで 『Shrink』は1ミリの無駄もなく隙のない一作に|Real Sound

BEST10……の+α

BEST10以外の作品についても触れようと思います(順位をつけると年越えそうなのでやめます)まず『光る君へ』は記憶を失くしてきちんと『源氏物語』を頭に入れてから一気見したい!最終回付近は静先生自身の作家観にもつながっていて激アツ激エモ展開でしたね。貴族や文学の時代が終わり、武士の時代へ(それを託された伊藤健太郎も良かったよねえ)と移らうラストがとにかく良かった。そんな素晴らしい幕引きの中、ただ胸を射抜かれにきた松下洸平演じる周明再登場が、THE大石静で最高!静先生ほんとうにお疲れ様でした。

年間ベストの記事でも書いたけど、とにかく今年はNHKドラマが頭一つ抜きん出ていた。新米女性ドラマPと女優を目指す車椅子ユーザーの女子高生がドラマ作りに奔走する『パーセント』を書いた大池さんはこれからすごく楽しみ。『すいか』コンビの小林聡美×小泉今日子がふたたびタッグを組んだ『団地のふたり』はおばさんドラマを謳いながら、男性たちの生きづらさにも目を向けていたところが良かった『宙わたる教室』も傑作。学びは人を隔てないというメッセージがNHK作品らしい。『海に眠るダイヤモンド』は『ラストマイル』を思い出した。無気力に生きていた玲央は、鉄平たちの人生に触れたことで"What do you want?"を口にできたのだと思う。2024年は配信ドラマも豊作。『地面師たち』『1122』『極悪女王』どれも文句なしにおもしろかった。11位を選ぶなら『宙わたる教室』か『地面師たち』かなぁ。あとやっぱり『おいハンサム‼︎2』も最高だった。S2の第4話、悩める女子たちみんなに見てほしいエピソードです。映画版も笑って泣けてグッとくるのでぜひ。

お仕事のこと

今年は仕事を辞めたこともあり、夏くらいからドラマウォッチャー稼業に専念できました!(いろんな人から聞かれるのですがドラマ業を専業にするからやめたのではなく、会社が嫌すぎて辞めました><b)昨年のブログには“今年はコラムを8本も書いた!”と書いていたんですが、なんと今年は単発22本+連載1作(10本)で33本も書いた……!すごく頑張った……!特に毎週連載していた『かぞかぞ』のコラムはめちゃくちゃ頑張りました。正直『かぞかぞ』じゃなきゃ無理!笑 何度見ても新しい発見があり、去年感じ取れなかったものが見えた気がしてすごく良い経験になった。作り手の方々が読んでくださったのもすごく嬉しかったです!

今年は『GINZA』さんのコメント掲載で誌面デビューをさせていただき、女性セブンさんや女性自身さんにも掲載させていただきました。7年やって初の誌面だったのですごくうれしかったー!

そして企画スタート時からゲストとして呼んでいただいている『ナタリードラマ倶楽部』が一周年を迎えました!おめでとうございます!そしていつもありがとうございます!!しかも一周年特別企画として作家の柚木麻子さんとドラマトークをしてきました!!2024年だけでなく、一生の思い出です……。取材当日はかなり緊張したのですが「ドラマ」という共通項が私たちを繋いでくれて、ほんとあっという間だった。柚木さんの新刊「柚木麻子のななめ読み!」もドラマ好き(ドラマを普段見ていなくてもドラマが見たくなります)にはたまらない一冊で、年明けに感想書きたいな。渡辺いっけいの魅力を熱弁されていて「いっけい」と呼ばれている回が特に好きです。またご一緒できるように精進します。

natalie.mu

そしてそしてなんと……明日!2025年1月1日夜10時!!NHK総合「あたらしいテレビ」に出演させていただきます!!!!

www.nhk.jp

これが2024年あすなこごと最大のビッグニュースです!まさか毎年楽しみにしている「あたらしいテレビ」に自分が出るとは夢にも思いませんでした。余談ですが、番組の関係者様が明日菜子黎明期からフォローしてくださっている方で収録当日に会えて嬉しかった…芸能人に会った気分でした……。こんな機会をいただいて感謝の気持ちでいっぱいです。放送までドキドキですが、コンテンツの5選に悔いはない!ドラマや映画への愛をたくさんぶつけてきました!楽しみにしていてください。

そして来年2月には、給料日ラジオのリアルイベントにゲスト出演させていただくことになりました!お母さん、わたしSHIBUYA LOFT9に立つよ……!2024年のベストコンテンツを語るイベントになっていまして、あすなこは映画・ドラマ部門に登壇します。いろんなところでベストドラマを語らせてもらっているので、給料日ラジオではベストトンチキドラマにしようかな……考え中です。初のリアルイベント参加なので、ぜひ遊びにきてくださると嬉しいです!

www.loft-prj.co.jp

そして給料日ラジオのありまよさん、書評家の三宅香帆さんと毎年恒例恋バナツイキャスをしました!えーっと、ほんとうにチケット制にさせてもらって良かった。私の恋愛観ダダ漏れでほんとお恥ずかしいんですが、ひたすら人生を感じる年末にぴったりのお焚き上げになっております!年末年始のお供にぜひ!

twitcasting.tv

2025年にむけて

今年は新年早々からいろいろありました。怒涛の2024年を象徴するかのようなショックなことが11月にありました。ドラマを見てもなんの感想も浮かんでこない。だけど、ありがたいことに原稿の依頼や憧れの人との取材があったり、超ビッグな仕事があったり。仕事を通して奮い立たせてくれる人や温かい言葉をかけてくれる人たちのおかげで、立ち直れやしないけど、まっすぐ立てるようになった気がします。あらためて、本当にありがとうございます。

今年『ブギウギ』の総括記事で、『ブギウギ』はエンターテイメントが人を救えないことを分かっている人たちが、エンタメの業や意義について描いている作品だと書きました。エンタメは生きるための栄養になる。生きる意味をくれる。だけど立ち上がるのは自分です。だから、エンタメを楽しむためにも、自分自身が健やかに元気に日々を重ねていかなきゃなとあらためて思った一年でした。なのでこれを読んでくれているあなた、どうか元気でいてください。私も元気でいます。そして2025年もたくさんドラマの話をしましょう!

今年もすべてのドラマにありがとう!ドラマに携わったすべての方に感謝です!おめでとうは言えないけれど、来年もどうぞよろしくお願いします。

明日菜子

あたらしいテレビ2025に出演します

ブログを読んでくださっている皆さま、こんばんは。明日菜子です。一年に何回かしか更新しないブログを読んでくださって、本当にありがとうございます。

 

なんとわたくし明日菜子、このたび……NHK「あたらしいテレビ2025」に出演することになりましたーーーーーーーーー!!!!わーーーーーーーー!!!!!!!

www.nhk.jp

↑NHKPRに名前かいてもらったの、一生の宝物すぎる(ツイ廃)

私は、宇垣美里さん、大島育宙さん、Taitanさんと2024年超個人的なベストコンテンツ5選のコーナーに出演しています。ドラマウォッチャーという肩書きで出演していますが、ドラマだけだと上位5選になってしまうと思ったので、ドラマ映画その他コンテンツの中から選びました。すごく楽しい収録でした!放送日まで残りわずかになった今、話したことよりも白目むいてないか、魂ぬけた顔していないかの方が心配になってきました。ぜひ温かい目で見守ってもらえますと幸いです。5選に悔いはございません!

私も毎年欠かさず見ている大好きな、大好きな番組です!オファーをいただいた際は、冗談なしにスパムメールかと思ったんですが、こんな貴重な機会をいただけて本当に感謝しています。2025年も頑張るぞー!!そして2024年も残りわずか、溜まってるドラマを見ますーーーー!!!!!「あたらしいテレビ」なにとぞよろしくお願いします!

『海のはじまり』弥生さんは可哀想なヒロインなのか?

この間TikTokを見ていたら「万年モテ期の私が男を沼らせる方法を教えます」という動画が流れてきて、つい見てしまった。その答えはなにかというと「男性に対してママのような気持ちで接する」「なんでしてくれないのではなく、これしてくれたの?!ありがとう〜のマインドでいる」というもの。なるほど、理にかなってる。20代半ばくらいだろう女の子が、その境地に至って、それを本当に実現できていることが本当にすごい。

明日菜子どんなTikTokを見てるねん……とツッコんだ方もいるでしょうが、私はふと流れてきたその動画を見て、とあるドラマのキャラクターを思い出した。現在絶賛放送中月9『海のはじまり』に出てくる弥生(有村架純)さんが、まさにそのメソッドを体現したようなお人なのだ。「弥生さん絶対モテるだろうな…」と毎週思っている。平成のモテ女がサエコさんなら、令和のモテ女は弥生さんです。

大学時代に付き合っていた恋人が亡くなったことがきっかけで、自分に子どもがいることが判明した月岡夏(目黒蓮)が、どのようにして父になっていくか、その過程を描く『海のはじまり』。弥生は夏の年上の恋人である。現在進行形で付き合っている彼氏に「実は子どもがいる…」なんて打ち明けられた日には、白目剥いて卒倒しそうなものの、弥生さんはそんな彼を受け入れ、その子の母親になろうと奮闘する。

長編ドラマ3作目にして、こんなにも世間を語らせる生方脚本すっごいなと感じる反面、主人公の夏が典型的な“顔だけ良い男”で「こいつ〜!!」とグーパンしたくなる。しかし鑑賞後にどうしても語りたくなってしまうので、そういう意味ではもうハマっちゃってるんでしょう。村瀬プロデューサーの手の内です。気づけばずっと『海のはじまり』の話をしている。

放送済みの第5話では、いよいよ夏が自分の家族に娘がいることを打ち明けたり、海ちゃん(娘)とお試し生活を始めたりと、徐々に夏が“父”として覚醒することを周りが待つフェーズになったと思う。しかし、血のつながらない恋人の子どもを受け入れようとしている弥生は、たびたび「お前は本当に母親になれるのか?」(いや無理です)という絵踏みをさせられているように見える。大竹しのぶ演じる亡き恋人の母親が、娘の死を受け入れられないのは分かるが、はっきりと娘を引き取ることをいまだ明言していない夏には積極的に父親になるようアシストをするのに、血のつながらない弥生に対しては邪険な態度を取ること、あまりにも血縁史上主義すぎん?と思ってしまう。

ふわふわと夏が漂っている分、全ての業を背負うように見える弥生に対して、同情の声も多い。

けれど、私はそんな弥生を“可哀想なヒロイン”のように捉えたくないのだ。彼女には中絶経験があり、昔の恋人に「これ…俺…(中絶)いつするの?」と散々な対応をされたことも明かされたけど、それでも彼女を可哀想だと思いたくないのは、もしかしたら自分と恋愛思考が似通っているからかもしれない。好きなものに手を伸ばさずにはいられない。好きになったものはしょうがない。弥生さんもきっとそんなタイプの女でしょう???と勝手に共鳴しているのである。(ちなみにこのマインドはアイドルなどが好きなオタク女性にありがちなんじゃないかと推察)。あまりにも口下手で優柔不断で(主語を話さない君はそもそも仕事が出来ているのか?クライアントに対しても大事なことを先延ばしにするのか?夏)でもそんな彼が好きなんだよな、主に顔面が好きなんでしょ、タイプには抗えないよね弥生…!!と私は弥生のイマジナリー女友達となって毎週彼女に声をかけています。

弥生は夏のなにがそんなにいいのか?と聞かれたら、顔である。私が弥生の代わりに答えてあげよう、顔である。今のところ顔しか良いところがないので多分そう。大好きな彼と別れて(ちなみに私は稲葉友さんの顔がすごく好き!)、もう恋なんてしない…する資格ない…と思ってた矢先に舞い降りたのが夏だったんだ。そして彼と付き合って、ん?と思うことはたまにあれど、女遊びがすごいとかギャンブル癖があるとか暴力を振るうとか、そんな致命的な欠点ではないからこそ、私がリードすれば良い、私がママになればいいのだと、あのTikTok女子のモテメソッドを弥生さんは地で行っているのだ。

ナタリーの座談会で「ああいうタイプの子は絶対に恋人を離さない」と話したんだけど、文字列だけで見るとあまりに偏見に塗れた発言だったのでさすがに削除してもらったのだが、勝手に弥生はすごく芯のあるヒロインだと思っている。だから可哀想な人として見たくない。カリスマ美容師に髪の毛ツヤッツヤにしてもらって海ちゃんと表参道を闊歩しよう。授業参観に行って「綺麗なママさんね」て言われて心の中でドヤ顔しよう。

何が言いたくて書いた記事なのか自分でもよくわからないけど、『海のはじまり』最新話を見ていてもたってもいられなくなったんだ。こうなったら全てを掴み取れ、弥生。好きな人も好きな人の子どもも全部掴み取ったれーー!!!

↑座談会の記事もぜひ読んでください〜

女は子どもを産む機械じゃない(ドラマ『燕は戻ってこない』最終回によせて)

三宅さんとありまよさんと『虎に翼』中間報告&『燕は戻ってこない』スペースをした。『虎に翼』もかなり込み入った週が直近だったため、過去一内容が濃ゆいスペースになったと思う。『燕』はいろんな意見があり、お二人とも私とは違う解釈だったけど、すごく勉強になった。参加してくれた皆さんありがとうございました!

というのを踏まえて、私が『燕』の最終回でなにを感じたのか、改めて書いてみる。

私があの最終回を見た時、いちばんに考えたのが「どうしたらリキがぐらを連れ去らずにすんだのか」ということだ。独身の私はもちろん子どもがいない。妊娠も出産もしたことがないから、想像するしかないのだが、リキが子どもを連れ去ったのは母性によるモノではないと思った。いや、正確にいうと、自分がお腹を痛めた子が可愛くなってきたという気持ちはもちろんあるだろう。ただ、リキを突き動かしたのは純粋な母性ではないと思った。代理母をした自分がただ子どもを“産む機械”ではないと主張するために、リキは子を連れ去ったように見えたのだ。

私は『燕』が3、4話くらいのころに一度コラムを書かせてもらっている。同じ2024年春に始まった『虎に翼』の100年先くらいの物語でありながら、寅子のように「はて?」を持たない、いや持つことができないリキたちの生々しい物語に唖然とした。昨今は貧困問題、特に若い女性の貧困問題を扱うドラマが増えてきたが、貧困とは物理的な意味だけではなく、「数ある選択肢を持てない」「最善な選択があるにも関わらずそこに辿りつけない」「正しい情報にアクセスできない」ことこそが“貧困”だと描く『燕』に衝撃を受けたし、マジでその通りだと思った。

realsound.jp

私は『燕』を見る以前から、“貧しさ”とは多くの選択肢を持てないことだと思っていて。『おいハンサム‼︎2』最終回で、選択肢が多くても悩みすぎることがあるよ〜選択肢が少なくても幸せなんだよ〜と言ってくれたときには、なんか自分の中のつかえを取ってくれたような気がした(でもどこかで選択肢が少ないことは不自由だと思っている自分はいる)

そんな私が見た『燕』の最終回は、やはり“選択肢”の話だった。リキは基から「子どもたちの面倒を一年見てほしい」という打診をされる。つまり、リキにはそれを「受諾する」「拒否する」という二つの選択肢が与えられていたのである。しかし、悠子と基の復縁により、その選択肢は失われた。リキの手のひらには依頼主である草桶夫妻の決定だけが残り、口を挟む余地もない。そのことがリキは腹立たしたかったのではないか。たとえ自分が子どもと一緒に過ごす未来を選ばなかったとしても、選択肢を取り上げられたことが惨めだったのではないか。自分はそんな理不尽さを黙って受け入れる機械ではない。女は産む機械なんかじゃない。自分は一人の人間なんだという叫びこそが、リキを突き動かしたのではないかと思うのだ。

もし悠子があんな形で復縁しなかったら、リキは子を連れ去ることなんてしないと思っていたけど、でも衝動的なリキのことだからわからない。ただ、いまよりはもうちょっと、穏やかな結末になっていたかもしれないなぁと思った……が、スペースでみんなと話してみて、いや、そんなこともないのかなと思った。

草桶家の恐ろしいところは、愛磨がいなくて一瞬は慌てふためくものの、「まあ一人いるからいいか……」となりそうなところである。(悠子は「やっぱりリキさんにも母性が湧いたのよ。もともと双子なんて望めなかったんだから、私たちは悠人を精一杯愛せばいいじゃない」とか言いそう)双子ちゃんを見ながら恍惚とする悠子が、第一話でマチューを眺めたときと同じでほんま怖かった。

『燕』が最終回を迎えたころ、『虎に翼』は絶賛寅子頭打ちまくり週で、ヒロインを非難する声の方が強かった。全く共感できない、ヒロインの気持ちがわからないとネットが荒れる中、『燕は戻ってこない』っていう誰にも共感できないがおもしれードラマがあってじゃな……と、たびたび『燕』のことを思い出した。私は、自分の人生においてなぞることのできない別ルートを辿れることが、フィクションの醍醐味だと感じていて、『燕』はまさにその真骨頂である。誰に感情移入できるかを重要視するのではなく、自分の芯はなにかを問われつづける物語だった。