あすなこ白書

日本のドラマっておもしろい!

彗星のごとく現れた期待のトンチキ枠「黄昏流星群」※ネタバレしかない

ドラマ実況アカウントをしていて思うのは、「自分が好きな作品と実況映えする作品は必ずしも一致しない」ということだ。例えば、『昭和元禄落語心中』を見るときは画面以外をよそ見する余裕なんてないし、『獣になれない私たち』もまずは物語をストレートに楽しんだ方がいいと思う。そもそも「実況映えする作品」とは、何なのだろう。


私が思うに、「ドラマを見ているだけでは物足りず、作品に何か言わずにはいられなくなるとき」が一つの基準だ。更にこの上に位置づけされるのが「視聴者にツッコミされるために生まれた作品(トンチキ枠)」である。不倫ドラマなど元の設定からアレな作品によく見られ、「奪い愛、冬」や「僕のヤバイ妻」はその枠の代表選手だ。トンチキ枠は、視聴者のツッコミがあってこそ完成するといっても過言ではない。
そのトンチキ枠の中でも私が度々話題に出すのが、テレビ朝日の「明日の君がもっと好き」だ。どんな作品かは未だに私もよくわかってはいないが、作中の様々なぶっ飛び描写が一部で話題になった。最初は文句を言いつつ視聴していたものの、とっちらかった内容が物凄い速度で解決した最終回にはある種の感動を覚えたし、FFの枠を超えてやいのやいの言う土曜の夜は何だかんだで嫌い…じゃな…かった(ちなみに今作はDVD化すらしていない)

 

このトンチキ枠に、今シーズン新規参入してしまった作品がある。フジテレビ木曜22時「黄昏流星群」だ。

 

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リアルタイムで見たのは三話が初めてだったが、初回から「トンチキ枠」への並々ならぬ才能を感じていた。局も制作陣も役者も違うのに、作中に漂う雰囲気があの「明日の君がもっと好き」を何処となく彷彿させたからだ。一人で見た後に「私何見ているんだろう…」と悶々とした気持ちになるのも、あの明日君以来のことだった(褒めていない)

 

視聴率がおかしいのか私のTLがおかしいのかは不明だが、黄昏流星群TL視聴率は60%~70%くらいあり、木曜日の22時に私のTLに浮上していた人はほとんど黄昏流星群を見ていた気がする。すると後日、

 

「黄昏流星群おもしろいらしいのに見てなくて後悔した…」

 

というツイートをちらほら見かけた。いや違うんだそういうのじゃない。まじでそういうのじゃない。

 

そのツイート一つ一つにリプライを飛ばそうと思ったが、それはそれで怪しいし私が黄昏流星群をゴリ押ししたいのかと思われたら困るので、ブログを書くことにした。黄昏流星群は面白い作品ではない。見ないことを後悔するような作品でもない。

どちらかというと、いや紛れもなく「おかしい」作品なのだ。

1.真面目な作りなのにおかしい

トンチキ枠に該当する作品は、そもそもの装いが他と違う。大体タイトルやメインビジュアルでその独特な雰囲気を感じ取れるものだが、黄昏流星群にはそれがない。
主演は佐々木蔵之介。公式は「人生の岐路にたたずむ男女の切ないラブストーリー」と位置づけし、主題歌は平井堅佐々木蔵之介世代の大人のラブストーリーと聞くと、「最後から二番目の恋」のような作品かと思うがこれが全然違う。ぶっちゃけ「最後から二番目の恋」は見たことないがきっとこういうのじゃない。
 
しかし、作品の骨組み自体は至って真面目だ。キャストもスタッフも大真面目だ。キャストインタビューで栞役の黒木瞳「登場するすべての恋愛の、美しさと切なさをお楽しみ頂けたら嬉しいです」と語っているし、春輝演じる藤井流星「今まではコメディー作品への出演が多く、大人な恋愛ドラマは初めてです」と言っているが黄昏流星群も間違いなくコメディだと思う。
 
しかし、我らが佐々木蔵之介だけは今作の異様な雰囲気に早くも気づいていたようで
 
真璃子も娘の婚約者、日野春輝(藤井流星)と禁断の恋に落ちていくことになるし、娘の美咲(石川恋)もいろいろあって。ストーリーの概要だけ聞くと“ありえないやん、これなに?”ってなるかもしれませんが(笑)。
(公式HPより)

「ありえないやん、これなに?」

 

2.背景があからさまなCGでおかしい

 
黄昏流星群と検索すると、高確率で「合成」や「CG」と出てくる。視聴者を騒然とさせたのはトンチキストーリーではなく、その背景。記念すべき第1話にびっくりするほど雑なCGをぶつけてきたからだ。
 
問題はスイスで起こった。
銀行から突然の出向を命じられ絶望に陥った完治は、家族に黙ってスイスのマッターホルンに向かう。そして運命の女性・栞に出会い、完治は恋におちる。一度は意気投合したものの、気持ちを抑えきれなかった完治の突然のキス(まあまあのホラー映像)に栞は驚き拒絶。朝になると栞は姿を消していた。後悔した完治は、あてもないスイスで彼女を懸命に探す。
 
 
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©️まんぷく

 

3.主要人物がもれなく皆おかしい

 

素人顔負けのCGもさることながら、何だかんだ言ってもこの一言につきる。「セカンドライフに差し掛かった男女の切ない恋」と銘打っているが、大前提として瀧沢家は皆どうかしているということを頭の片隅に置いていただきたい。

 
 

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まずは一家の大黒柱・完治。
仕事一筋の完治は銀行員として恥ずかしくない人生を送ってきた、という設定もつかの間。スイスで栞にフラれ意気消沈するも、出向先の子会社でまさかの栞と再会。四話放送終了段階の今、「出向も悪くないな」とロマンティック恋の花咲く浮かれモード真っ只中である。
その完治を怪しいと疑う妻の真璃子(中山美穂)。娘にも友達にも絶対浮気してるよ!と言われ相手は銀行時代の部下・篠田(本仮屋ユイカ)ではないかと探るが、真璃子も違う男に心惹かれる。相手は娘の婚約者・春輝(藤井流星)!完治の比にならないほどタチが悪い。ミポリンの方が断然悪い。しかも徐々に惹かれるのではなく、割とすぐ好きになる。イケメンだから仕方ないのかとは思うけど、いやそれでも、それでもそこに理性ないのか。ちなみに真璃子のロマンティック恋の花咲く浮かれモード時には中島美嘉が流れ、ハーレークイーンで小説を出せるんじゃないかレベルの妄想が始まる。
 
母娘三角関係の頂点にくる春輝は有能なイケメン弁護士!唯一の欠点はマザコン!…と言いたいが、人様の家に黙って入ってくる癖があるので私としてはそちらの方がヤバイと思う。
 
親子の三角関係ってどこの層が喜ぶんだよと思う程にベストオブいらない設定なのだが、恐ろしいことに今作ではこの誰得三角関係がもう一つ存在する。栞×完治×栞の母だ。もう一度繰り返す。栞の母だ。
 
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栞(黒木瞳)は倉庫会社の食堂で働きつつ、一人で痴呆症を患う母の面倒を見ている。結婚はしておらず、親の介護で自分を犠牲にし続けてきた女性だ。完治との登山デートの時も山には登れず、急に病院から呼び出されてしまった。その時に完治と栞の母が初めて会うわけだが、そこで栞の母のボケが炸裂!完治を自分の夫と思い込み、「あなた〜会いたかったわ〜」と突如色めき出す。ここまでは微笑ましい光景だったが、
 
「ほら〜ここもさすってくれたでしょ!!」
 
と自分の胸に完治の手を無理やり押し付けだす。地獄絵図かと思った。願わくばこの下りは二度と出てこないでほしい。
 
 
父は旅先で出会った女と不倫をし、友達のように仲が良い母は自分の婚約者に恋をして…となると一人娘の美咲(石川恋)が可哀想…!!
 
と思うが、美咲も美咲で何かあるらしい。それが突如判明したのも第四話だった。春輝も「美咲には別に好きな人がいるかもしれない」と漏らしていたし、当の美咲本人も首元のキスマークを見て意味ありげに微笑んでいた。もし美咲まで只ならぬ道に走っていたら万引き家族もドン引きの不倫家族誕生だ。そのキスマークは誰がつけたんだよ美咲!!(ちなみに母はそのキスマークは春輝さんがつけたの…?と悶々とする)
 
この疑惑の真相がひょっこり顔を覗かせたのも、第四話のラストだった。
遂に完治と栞はホテルに向かう。緊張した面持ちでエレベーターを待っていたら、何と中では若い女と初老の男性が熱烈なキスを交わしていた。
 
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人が入ってきたことに気づき、キスを辞めた年の差カップル。しかしよく見ると…その女は自分の一人娘・美咲だった。
 
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まさかの美咲?!隣のジジイ誰だよ!!!そんなジジイこちとら知らねえぞ!!!知らねえぞ!!!!と思っていたら、その相手が誰もが知る適当おじさんこと高田純次だったのだから荒ぶっていた我々Twitter勢も一気に黙る(ちなみに高田純次は脈略もなく初登場)。トレンド検索が「黄昏流星群 CG」から「黄昏流星群 高田純次」に変わった瞬間だった。
そこで美咲も完治との栞の姿に気づき、二度目の地獄絵図で第四話は終わる。第五話ではトンデモ一家+婚約者で旅行に行くらしいが、父娘どんなメンタルで旅行に行くんだよと問いただしたい。というか高田純次はどこから出てきたんだよ!!
 
***
 
以前、このようなマシュマロ(匿名質問)をいただいた。
 

Q.よく話題に出る『明日の君がもっと好き』が気になります。そんなに面白い作品だったのですか?

 
何度も言うが、明日の君がもっと好きも「面白い」ではなく「おかしい」作品だった。あの当時TL上にいた人達に「明日君は見た方がいいか?」と聞けば、大抵の人が「見なくて良い」と答えると思う。このマシュマロを見て爆笑すると同時に、我々のせいでいらぬ弊害を生んでしまったと反省した。
 
では今作はどうだろう。
 
 

Q.黄昏流星群は見た方が良いですか?

 
 
 
見なくていい。
 
 
 
 
見なくていいが、もしこれを読んでいるあなたが木曜日22時にTwitterに来てくださるのならば、私は心の底から歓迎する。
 

私、ガッキーかもしれない 「獣になれない私たち」初回感想

「女の人、すごい格好だなぁって…ブーツかっこいい〜」

 

「…ああいうのってさ、どこにアピールしてんだろうな?」

 

「…どこ?」

 

「あれ好きな男、そうそういなくない?」

 

「…着たい服を、着てるだけなんじゃないの?」

 

 

恋人同士の何気ない会話にしては中々シビアだと思った。いくら田中圭相手だとしても、私もガッキーのように「誰しもが男に好かれたくて服を選んでいるわけじゃない」とやんわり伝えてしまうかもしれない。

 

www.ntv.co.jp

 

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10月に入り、いよいよ秋ドラマが始まった。いつものバーのマスター曰く「夏は皆出かけることを見越して、秋ドラマに各局力を入れるんじゃない?」と言っていたから全国民が夏の思い出作りに行くと思ったら大きな間違いだと思いつつも、秋が来るのを楽しみにしていた。しかし月9のSUITSで少し肩透かしをくらってしまい、火曜の2作はというと輪郭があまり掴めなかった。となると、必然的に水曜日の「獣になれない私たち」への期待値が更に上がった。作品が始まる前から「この脚本家だから絶対面白い」とかドラマ好きにしか伝わらないようなことは言いたくないという変な気持ちがあったから言いたくなかった、言いたくなかったけれど。野木さんの「けもなれ」が面白くなかったら私は今期どうすればいいの…とまで思っていた。何故か少しの緊張感を抱いてドラマを見てみると、やっぱり面白かった。陳腐な表現だけど「さすが野木さん」としか言いようがない初回だった。

 

大天使・ガッキーは、今世ではECサイトを運営する会社で営業アシスタントとして働いている。クラフトビールバー「5tap」が行きつけで恋人は皆大好き田中圭という何ともキラキラな滑り出しかと思いきや、4年も付き合っている恋人にあまり本音は言えず、会社ではパワハラ社長に仕事を押し付けられ無気力の新人や戦力外の営業の尻拭いをさせられ、と心身ともに擦り減っていく日々を過ごしていた。私の周りに大天使ガッキーは勿論いないけど、ガッキー演じる「深海晶」のような人はいる。出来る故に頼られるけど自分自身は人に頼れず、困ってても周りを気にしてニコニコしている人、我慢している人。あそこまでひどい環境ではないし晶のように仕事が出来る人間ではないけれど、私にも思い当たる部分があった。私の中にも晶…ガッキーの部分があるかもしれないし、え、何なら私ガッキーかもしれな(略)

 

晶と出会うのが松田龍平演じる松田龍平、間違えた「根元恒星」だ。と言うのもこの根元という役が、まさに私たちがイメージする松田龍平まんまなのだ。個人事務所で会計士・税理士をしていて、感じが良さそうなのにスイッチが入ると他の追随を許さないほどの毒舌で攻める男・根元。松田龍平の恐ろしい所はどの作品のどの役においても、例えそれが180度違う役柄でも「松田龍平って普段もこんな人なんだろうな…」と見る側に思わせてしまう所だ。カルテットの別府さんの時も「普段の松田龍平って感じだな」と思ったのに、別府さんと全く違う今回の根元という役でも「普段の松田龍平って感じだな」と思ってしまった。実際、松田龍平本人が別府さんと根元の要素を持っていたら中々危ない二重人格だがそれでも思ってしまった。そんな根元は、菊地凛子演じる呉羽と付き合っていてカルテットの菊池亜希子に続き何とオサレな二人だと思いきや開始早々、呉羽は別の人(交際0日)と結婚すると言い出すのだからドッヒャーである。でも菊地凛子なら言いそう。

 

同じ店の常連客、という事くらいしか共通点がない正反対の晶と根元。公式曰く「大人たちのラブ(かもしれない)ストーリー」とのことで、先の展開が中々読めない上にラブストーリーだと思って油断していたらバリバリ社会派な側面も見せる、強烈な第一話だった。

 

放送終了後、様々な感想をTwitterで見た。

中には「想像以上に重い」「キツイ」という意見もあったほど、晶が置かれている環境は初回から堪えるものがあった。「大天使・ガッキーの御顔なだけで人生スーパーイージーモードっしょ!!」と庶民の私は思っていたけれど、ガッキーはガッキーで、美人は美人で大変なのだ。自分がどれだけ努力しようと、周りが変わらないと出口が見えない問題は辛い。しかしそこはあの野木さん。野木さんならどうにかしてくれると思った1話のラストだった。あの1話を見て、辛いと自分のことのように感じた小さなガッキーを抱える人たちにとって、少しでも胸が晴れるような展開になればいいなぁと思う。

 

そう言えば友達に「今度〇〇さんとご飯食べに行こうよ。何曜日がダメとかある?」と聞かれた。我ながらどれだけテレビ見たいんだよと思いつつも、春はモンテ・クリスト伯をリアルタイムで見たいから木曜日以外と言い、この間まではギボムスの為に火曜日以外にしてくれと言っていた。「何曜日でもいいよ、みんなに合わせる!」と言ってしまったけど、やっぱり秋もダメな曜日は言っておこう。そんなことを思った水曜の夜だった。

若き二人の女優が手にした次の一手 映画『累』感想

「アイドル戦国時代」とよく聞くけど、役者の世界の方がよっぽど戦国時代だと思う。ついこの間画面の片隅で「おっ、この子見たことないけど存在感あるな」と思ってあたかも自分が発見したような気分になっていると、大体次々クールの作品で主要キャストの一人になっていたりする。全く終わる気配がしない役者戦国時代の中で、最も競争率が激しいのが「清楚系女優」枠だと思う。

その一因はなんといっても、NHKの朝ドラにある。女優ならば一度は目指すであろう朝ドラヒロイン。私も次生まれ変わるならば、seventeenモデルを経た後に朝ドラに抜擢される永野芽郁ちゃんコースを歩みたいと常々思っていた。しかし、ふと思った。「朝ドラヒロインってむちゃくちゃ大変なのでは…?」

 

民放ドラマより回数が多いとかNHKの看板を背負うのが大変だとか、そんなこたぁ目指した時点で私も覚悟はしている(なった気でいる)朝ドラヒロインに選ばれると同時に脚光を浴び、何ならキャスティングが発表された時点で「国民的清楚系女優」の箔を押されるのだからやむを得まい。放送中はお茶の間から愛され、朝ドラバブルで仕事も増える。「朝ドラ後、初の民放出演作!」とか何とかで民放に行っても特別扱いされることだろう。
しかしいつまでも「朝ドラ出身清楚系女優」を名乗ってもいられない。NHKが次から次へと清楚系女優を発掘していくからだ。私主演の朝ドラより次作の方が話題になることも十分にあり得るし、ヒロインだけでなく脇役にダイヤの原石がいる可能性もある。しかし私の気なんてお構いなしに、NHKは次から次へと若くてフレッシュな女を見つけてくる。半年ごとに若くて可愛い女を確実に連れてくるのだから、そこらへんのチャラ男よりもタチが悪い。自分主演の朝ドラが鳴かず飛ばずのものにでもなれば、心のキャパが1ミクロン程度しかない私は間違いなくNHKを恨む。選んでくれた恩なんて忘れて間違いなく恨む。くそNHK、くそ脚本家!(あくまでも心のキャパが狭すぎる私の場合である)。

 

朝ドラヒロインになってしまったら「朝ドラ出身清楚系女優」の肩書に甘んじることなく、早々に自身の「第二の武器」を見つけなければならない。民放ドラマや映画でブレイクした女優たちとは一味違うプレッシャー。朝ドラヒロインって大変なんだろうなぁ、と思い私は妄想をやめた。何の話がしたいかって、映画を見た話がしたかったんだ。

 

 

kasane-movie.jp

 

原作を数巻読んだ事がある俄かな私でさえも、キャスティング発表時には愕然とした。「NHK朝ドラ主演を務めた二人が」という煽り文句も一ミリも惹かれないしというか全国民が朝ドラ見てると思わないで欲しいし、漫画の実写化なら山崎賢人か土屋太鳳持って来ればいいだろという安易なキャスティングもやめて欲しい。そんじょそこらのとりあえず実写化したろか的な安っぽい漫画と「累」を一緒にしないでよ!!と、俄かは俄かなりに思っていた。

 

気が変わったのは夏ドラマ「チア☆ダン」を見ていた時だ。また土屋太鳳が主演なのかと思って見始めたが、回を重ねるごとに土屋太鳳という女優の良さが分かってきた。オーラと存在感と、何と言っても華がある。何で主役ばかり…と思っていたけれど、逆に土屋太鳳を端役にすると彼女はきっと主役を食ってしまうのだ。考えてみれば土屋太鳳の作品を真剣に見たのはチア☆ダンが初めてだったかもしれない。もしかしたら「累」の土屋太鳳キャスティング、中々いけるのでは…?そう言えば、W主演をする芳根ちゃんの闇落ち演技も良かった(高嶺の花)。「累」の累・ニナに似てるかはさておき、土屋太鳳の対になる存在が芳根京子というのにはとても合点がいく。え、「累」実写化中々いけるのでは…!!!?

 

 

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幼い頃より自分の醜い容姿に劣等感を抱いてきた女・累(芳根京子)。今は亡き伝説の女優・淵透世を母に持ち、母親譲りの天才的な演技力を持ちながらも、母とは似ても似つかない容姿に周囲からも孤立して生きてきた。そんな彼女に母が唯一遺した1本の口紅。それは、キスした相手の<顔>を奪い取ることが出来る不思議な力を秘めていたー。

(公式HPより抜粋)

 

 

結論:めちゃくちゃにいけた

中々どころかめちゃくちゃにいけた。

 

母・淵透世の昔の知り合いだと名乗る羽生田(浅野忠信)から舞台に誘われた累は、そこで女優・丹沢ニナ(土屋太鳳)に出会う。美しい顔を持つニナだが芝居はまるでダメ、というこの「顔だけは良いから良い役をもらったが演技はまるでダメな女優」の芝居をする土屋太鳳がまず上手い。きっと土屋太鳳自身も同世代のニナのような女優を沢山見てきたのではないかと思う。その後スランプのニナに代わってと累が紹介されるのだが、自分とは似ても似つかない醜い容姿の累にニナは発狂する。「こいつが私の代わり!??」と叫びだし累を激しく罵りだす土屋太鳳がこれまた最高なんだ。

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長いこと胸の内にあった「なぜ土屋太鳳はカマトトぶっている(死語)ように見えるのか問題」に漸く決着がつき、我ながら天晴れだった。もしかして、土屋太鳳の本領はココではないか。台詞も表情も声色さえも、丹沢ニナを構成する全てが「こんな土屋太鳳待っていた!」で溢れていた(ここまで開始10分くらい)

 

ニナは舞台に立てない自分の為、累は憧れていた舞台に立つ為、互いの目的の為に二人は度々キスをして顔を交換する。「醜く暗い芳根京子」「美人で強気な土屋太鳳」だったのが、度々自信家で口が悪い芳根京子や消極的な土屋太鳳になったりする。ざっくり分ければ二人の顔の系統が同じなことも、今作では大きなプラスになっていた。顔だけではなく二人の芝居も呼応しあい、良い意味でどちらがどちらか分からなくなる。二人の女優が重なり合い融合していく様が、まさに「累」という作品そのものだ。

 

その後、(気持ちは)累(だけど姿は土屋太鳳)は演技をする楽しさや舞台に立つ喜びを覚え、「期待の若手美人女優・丹沢ニナ」として世間に名を響き渡らせる。ニナが売れるきっかけとなった「かもめ」を始め、作中の演劇には実際にある作品が使われているのだが何と言ってもサロメ!!今作を見た方は必ずサロメサロメと呟いていて他人から見るとサロメって何ぞや案件だと思う。人気女優となったニナが主演する作品で、今作最大の見せ場こそ「サロメ」だ。

 

ユダヤの王エロドは、自分の兄である前王を殺し妃を奪い今の座に就いた。妃の娘である王女サロメに魅せられて、いやらしい目を彼女に向ける。その視線に堪えられなくなったサロメは、宴の席をはずれて、預言者カナーン(洗礼者ヨハネ)が閉じ込められている井戸に向かう。預言者は不吉な言葉を喚き散らして、妃から嫌がられている。預言者との接触は王により禁じられているのだが、サロメは色仕掛けで見張り番であるシリアの青年に禁を破らせて、預言者を見てしまう。そして彼に恋をするのだが、預言者のほうは彼女の忌まわしい生い立ちをなじるばかりである。愛を拒まれたサロメはヨカナーンに口づけすると誓う。(Wikipediaより引用)

 


「累 -かさね-」【土屋太鳳/劇中ダンス映像「七つのヴェールの踊り」】

(リンク貼りましたが、見に行く方は絶対見ない方がいい)

 

もう本当にこれ最高なんすよ…!

ダンスで培った身体能力と体感を主軸に、23歳とは思えない艶やかさと存在感にただただ圧倒される。天才若手女優となったニナが有名演出家・富士原(村井國夫)の指導により、自分の演技を確固たるものにしていくように、ニナ演じる土屋太鳳自身もサロメの稽古から舞台本番の内に進化していくのだから凄い。

 

 

画面越しではなく天才女優・丹沢ニナの空気を確かに感じたし、何なら私は国立劇場にいるんじゃないかとさえ思った(その10分後にはtohoシネマズ渋谷になっていた)。私は今作を見た昨日からずっと「見てほしい」と呟いているが違う。

味わってほしいんです。「累」という作品が一つの完成形を迎える瞬間を、作品が持つ魅力に応えねばと言わんばかりに切磋琢磨しあった二人が作り上げたあの世界を、是非大きなスクリーンで味わってほしい。 

 

圧巻の112分、物語はAimerが歌う「Black Bird」で幕を引く。この歌を以って、漸く映画『累』は完成する。


Aimer 『Black Bird』MUSIC VIDEO 映画『累-かさね-』(9月7日(金)公開・主演:土屋太鳳×芳根京子)ver.

 

今年の日本アカデミー主演女優賞は「万引き家族」の安藤サクラだろうが個人的には土屋太鳳にあげたい。見返すと太鳳太鳳ばかりいっているが、演技力化け物の土屋太鳳に追いつこうと作中で進化し続けた芳根ちゃんも素晴らしかった。荒削りさは感じるけれど、間違いなく芳根ちゃんの転機となる作品だと思う。

 

twitterを見ていると美人の芳根ちゃんが醜いっていう設定は云々…的な呟きを見るけど、観る前の人がしているネガティヴな呟きを見かける度に私の中の悟空も呟く。

 

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「おめぇ、ま〜だそんなこと言ってんのか」

 

 

土屋太鳳23歳、芳根京子21歳。

一つの当り役に巡り会うのも難しいと思う役者戦国時代で、二人は早々に「第二の武器」を見つけてしまった。2019年は彼女たちを「朝ドラだけ」や「恋愛漫画実写化女優」と揶揄する人も減るだろう。その2019年が来る前に、まずは二人の若手女優の才能を存分に引き出し開花させた映画『累』を一人でも多くの人に味わってほしいと、切に願う。

昔も今も、これからの私も好きになる 映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』感想

私はギリギリ平成生まれだ。自分が高校生の頃「ギャル文化」は若干廃れていたし、ルーズソックスも既に過去の遺物だった。田舎の女子高だったので、奇抜な格好をする同級生は特にいなかったけど「派手な子」はいた。近くに好きな男の子がいるわけでもないし、高確率で見張りの先生がいるから学校帰りに遊びに行くこともない。何よりも先生に怒られてまでオシャレなんてするもんじゃないよなぁ、と派手な子たちが注意される度にそう思っていた。

 

sunny-movie.jp

私の高校時代より5~10歳上の方々にドンピシャであろうこの作品。物語は安室奈美恵の「SWEET 19 BLUES 」から始まる。

 

***

何不自由ない暮らしをしている専業主婦の奈美(篠原涼子)は、いつも通り家族と朝食をとっていた。テレビでは安室奈美恵のニュースが流れていた。奈美は勿論、あの頃の女子高生はみんな安室ちゃんに憧れていた時代。奈美は過去の映像を見ながら、ふと自分の高校時代を懐かしんでいた。
ある日、怪我をした母のお見舞いに行くと別の病室から奇声が聞こえる。部屋を覗いてみると、医師や看護師に押さえつけられている女性の姿。病室の名札には見覚えがあった。奈美の高校時代の同級生・芹香(板谷由夏)が入院していたのだ。
芹香はグループのリーダー的存在で、現在は複数の会社を経営する女社長になっていた。しかし彼女は末期の癌で、余命もわずかだと言う。

 

「最後にSUNNYの皆に会いたい」

 

芹香の最後の願いを叶えるべく、奈美は高校時代の仲間・SUNNYのメンバーを集めることに奔走する。

***

 

韓国のリメイク作品だが、今作では90年代の日本が大きなテーマになっている。私のようにドンピシャではない世代の人も大丈夫。「90年代とかあんまり知らないんですけど…」というヤングたちも、久保田利伸LA・LA・LA LOVE SONGに乗って90年代の世界へと一気に連れていかれるから無問題。

しかし今をときめきまくっている広瀬すずを始め、メインキャストのJK時代を演じる女優は皆二十歳そこそこ。何なら渡辺直美のJK時代を演じた富田望生は18歳なので生まれてすらいない。でもスクリーンの中には、確かに「90年代版」の広瀬すず山本舞香が存在していた。ルーズソックスに憧れるもすぐに買えないからと自分のソックスを伸ばしてはく広瀬すず、細眉に少し焼けた肌の山本舞香。彼女たちだけではなく、街の雰囲気も流れる音楽もロン毛姿が妙にやらしい三浦春馬も、出てくる人・モノ全てがMADE IN 90年代なのだ。

 

90年代のギャル達は無敵だった。援助交際を持ち掛けるリーマンを返り討ちにしたり、時にはテレクラで小遣い稼ぎをしたりとギリギリな事をする割に、自分達が「ダサい」と思うことには一切手を出さねぇ!という強いポリシーがあった。「良い・悪い」ではなく「カッケェ・ダセェ」で物事の善悪を決める姿は非常にクールだと思う。

山本舞香演じるJK時代の芹香がまさに生粋のギャルで、これまたはちゃめちゃにカッケェのだカースト表のあの三角のほぼ頂点にいる存在なのにも関わらず、気さくで仲間思い。田舎から転校してきた奈美(広瀬すず)を自分のグループに誘ったのも芹香である。チアダンで山本舞香のことを気になった方は、ほぼ100%の確率でSUNNYの山本舞香を好きになる、と言うか好きにならざるを得ない。

その芹香の対極にいるのが、池田エライザ演じる奈々。ギャルのバイブル雑誌「egg」のモデルで(eggという名前が懐かしすぎて涙出る)どこかミステリアスな存在だ。奈々は90年代のギャル、というよりギャルの格好をした池田エライザなのだけど画面に映るエライザがいちいち美しかった。いつ何時の表情を抜かれても、美・美・美!!同級生にいたら絶対お近づきになりたいし、来世人間に生まれてくるなら池田エライザの顔面になりますように、と食い入るようにスクリーンを見た。ちなみに、SUNNYのメンバー探しで最後まで難航するのが奈々。なぜ奈々と連絡が取れなくなってしまったのか、そちらも物語の鍵となる重要なエピソードだ。ついでに言うと、SUNNYのメンバーで一番最初に連絡が取れるのはお察しの通り梅(渡辺直美)である。秒で連絡が取れる。

この二人を始め、JK時代のキャスト達に大人版キャストの面影を何処となく感じるのも面白い。豪華なだけでなく、この個性的なキャストを率いるのが篠原涼子広瀬すずなのも今作のセンスを感じる。ちなみに大人版でいうと、演技では小池栄子に注目しがちだが油断しているとともさかりえに度肝を抜かれる。全力で観客の度肝を抜いてくる。あと鰤谷…大人版関係ないけど鰤谷…!お前は絶対幸せになれ…!

 

大人版・奈美(篠原涼子)はSUNNYのメンバーを集めるにつれ、皆が昔のように必ずしも楽しいだけの人生を送っていないことを知る。そして時間の経過とともに進む、芹香の病い。果たしてSUNNYのメンバー全員で再び集合できるのか。

懐かしさと少しの切なさを感じる90年代の香りと共に、出演しているキャストを更に好きになる作品だった。知っている人はより好きに、知らなかった人も好きになる。予告やキャッチでは「青春と再会する」だの「愛に満ちた青春ムービー」だの、青春が前面にプッシュされがちだが、今作は青春時代の尊さだけでなく年齢を重ねる楽しさも教えてくれる。それはJK時代に負けず劣らず、大人時代のSUNNYのメンバーも最高にパワフルで最高に格好良く描かれているからだと思う。今青春真っただ中の学生は勿論、青春時代を通り過ぎた我々大人にもエールを送ってくれる華やかな作品だ。

  

最初に言った通り、私のJK時代はSUNNYのメンバーのように決してド派手ではなかった。けれど私は私で満足している。

しかしエンドロールが流れる中、小沢健二の「強い気持ち・強い愛」を聞きながら猛烈に思ったことがある。

 


「SUNNY 強い気持ち・強い愛」全曲メドレーPV

 

私、生まれ変わったらギャルになりたい…っ

 

2018年夏ドラマ初回感想②

 

 

asunako-hakusho.hatenablog.com

 

いつもよりゆるめな初回感想第二弾!

 

※あくまで一話を見た段階のざっくり感想

※個人的に刑事・医療ドラマは不得意(ここ大事)

※テレ東、テレ朝系のシリーズ枠はみない(ここも大事)

 

 

 

①『この世界の片隅に』(TBS/日9)

【人気漫画原作、アニメ化やドラマ化もされた本作をTBSがリメイク。太平洋戦争の中、すず(松本穂香)が家族と懸命に生き抜いた様を描く】

 

・日曜劇場疲れの人には癒し

・朝ドラ見たことない奴さえ感じる「朝ドラ」感

どえろい松坂桃李

 

漫画未読、映画ドラマすべて未視聴勢としては楽しめた初回。戦時中といえど「時代物」という括りの中、分かりにくいところが無かったり視聴者を置き去りにしなかったというだけで、初回としては非常にいいと思う。前作のブラックペアン、そして次クールに下町ロケットと「THE日曜劇場」という布陣が続く中、私のように日曜劇場疲れしていた人にはホッと一息つけるような作品に感じた。

ドラマ好きを自称しつつ朝ドラを見たことがない私でも感じる「THE朝ドラ感」。やけ食いする伊藤沙莉の画だけでこちらもご飯三杯いけそう。いきなり結婚しなきゃいけない相手が松坂桃李というのは空前絶後スペシャルラッキーだけど、その小姑が尾野真千子というのは結果プラマイゼロですよね。二話予告で「怪子、襲来」ってテロップ出てたけど「襲来」って人に使う言葉じゃないっしょ。

松坂桃李と一瞬だけど何とも言えない雰囲気が出ていた二階堂ふみのどえろコンビに期待しています。あとドロンズ石本がいい味出してる!

 

 

 

 

②『ゼロ 一獲千金ゲーム』(日テレ/日10時半)

【日本一の資産家・在全が建築中の「ドリームキングダム」に若者たちを集め、賞金1000億円を賭けて様々なゲームを仕掛ける。そこには塾講師として働きつつも裏では弱いものを救う「義賊」として活動する零(加藤シゲアキ)の姿もあった】

 

ライアーゲームを何度も煎じまくった感じ

御前って誰だよ只の梅沢富美男じゃねえか(二回目)

 

毎回いろんなゲームをしては、金か命が大事かという振るいにかけられ、クソみたいなやつら同志で友情が芽生えるという展開だと思うのだけどこれは回数持つのだろうか。この手の作品は沢山してるし、日テレではバラエティもしていたから既視感が凄い。

小池栄子筆頭に頑張っているのは伝わるけど、御前という名のただの梅沢富美男で台無しだわ!演技力がないというかそういう問題じゃねえんだ、ただの梅沢富美男なんだよ!!

 

 

 

③『ラストチャンス 再生請負人』(テレ東/月10)

【第一線で働いていた銀行マンの樫村(仲村トオル)は、吸収合併を機に転職を決意。飲食企業のCFO(最高財務責任者)として会社の再建に挑む】

 

・一話の段階で二回も合併にあう不運の男・仲村トオル

水野美紀が幸運の女神…だと!!?

 

あらすじやキャストの布陣を見ると日曜劇場みを感じるが、そこまでの固さは無く見やすい作品。どちらかというとテレ朝の「就活家族」を思い出す。

まず第一話にして長年勤めていた銀行が吸収合併され、まあそこは分かるけど次も吸収合併で折角の就職がぱーになるなんて…!もう一層のこと、仲村トオルが転職した先々で吸収合併が起こってほしいと願ってしまうほどの合併ぷりでした。しかしやっと就いたCFOもいきなり株を1000万買えと言われたり、会社が明らかに何かを隠していたりと嫌な予感しかしない!!

ちなみに仲村トオルは道で水野美紀と出会った日に職が決まる。トオル水野美紀のことを「金の女神だ~!」と家族にも話すのだけど…果たして本当に女神なのか!?破壊神じゃないのか!!?

今作には大谷亮平さんも出演しているので、最終回で大谷さんが星にならないことを願うばかりです(画像参照)

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④『健康的で文化的な最低限度の生活』(フジ/火9)

【安定を求め公務員になったえみる(吉岡里帆)が配属された先は、生活保護者を支援するケースワーカーだった!】

 

・王道お仕事ドラマ、今期一の見やすさ!

・「井浦新」「田中圭」を今引いた、今期一の運の良さ!

 

コア向けな作品というか中々曲がった作品が多い2018年夏クールの中で、キャスト・内容ともに今期1の見やすい作品だと思う。視聴率があまり良くなかったことが意外。

原作は一巻をさらっと見ていたので一話の展開にあまり驚きはなかったけど、中々にヘビーな題材なのでそれをオブラートに包むことなく、原作の良さ全開の実写作品にしてほしい。それにしても遠藤憲一が受給者って、かなり生命力ありそう。

 

 

 

⑤『ハゲタカ』(テレ朝/木9)

不良債権を抱えた銀行や名門企業に買収劇を仕掛ける「ハゲタカ」と揶揄される男・鷲津(綾野剛)の華麗なる逆転ストーリー】

 

・ここでいう「億」の単位はこちらでいう「ペリカ」くらいの単位ですか?

綾野剛のめくらせ芸に期待

池内博之がこれでもかってくらい胡散臭い

 

注意書きに刑事モノと医療モノが苦手と書いたが、私ビジネスドラマも苦手だったことを忘れていた…!!ひたすら綾野剛のイキり具合と池内博之の胡散臭さを楽しむことに務めた一時間強。

ペリカは言い過ぎかもしれないけど、億億出すぎて億の感覚マヒしてくる。私も六角さんのように二週間で5億返済っておいおい超イージーじゃない?綾野剛超優しいじゃんって錯覚したけど普通に考えて無理ゲーだわ。返せねえわ。

いつかハゲ頭の俳優さんに鷲津のことを「このハゲタカが!」と罵ってほしい。そこで「ハゲはてめぇの方だろ!」とイキリ返す綾野剛が見たいですね。その回を夢見て、頑張って見続けようと思います。

 

 

 

⑥『探偵が早すぎる』(日テレ/木深夜)

【母親を亡くし、家政婦と暮らしていた大学生の一華(広瀬アリス)。亡くなった父の5兆円もの遺産を受け継ぐことになり、親戚一同から命を狙われる。家政婦が一華を守るために依頼をしたのは「事件を未然に防ぐこと」をモットーにしている何とも胡散臭い探偵(滝藤賢一)だった】

 

滝藤賢一そのものが「ミハンシステム」

・深夜あるあるの無難に面白い作品

・メイン三人が適材適所

 

深夜あるあるな緩さ。個人的にはこの枠に適していると思う。

事件を未然に防ぐという意味ではこちらも「絶対零度」だけど、一時間でうまーくオチをつけれているのは月9より今作な気がする。滝藤さんをはじめメイン3人みんなあっているけれど、中でも水野美紀のドンピシャ感!ぶっちゃけ滝藤さんよりも水野さんの方がアリスのこと守れそう。

 

 

 

⑦『透明なゆりかご』(NHK/ 金10)

【町の小さな産婦人科医院でアルバイトをすることになったアオイ(清原果耶)。不器用でコミュニケーション下手なアオイが、命は何かを問う物語】

 

・清原果耶ちゃんの透明感溢れる演技がひたすら尊い

・実写化作品としても秀逸、清原果耶ちゃんのPVとしても秀逸

 

OPのChara、清原果耶ちゃんの瑞瑞しさ、作品に漂う暖かな雰囲気に思わず泣きそう。とにかく主役の清原果耶ちゃんが魅力的!カンカン照りの青空の下、ポニーテールの清原果耶ちゃんが「遅刻~!」と言いながら自転車を漕ぐというシーンだけで涙出そう。尊すぎて涙出そう。そのシーンだけでカルピスかアクエリアスのCM出来そう。

フレッシュな主役を支えるキャストも、これでもかという素晴らしさ。裏のチアダンも夏らしい爽やかな作品ですが、「透明なゆりかご」今期のおすすめの一つになりそうです!

 

 

というわけで駆け足で書きました第二弾。駆け足過ぎてすみません。

残すはテレ朝カオス枠のみとなりましたが、改めてドラマ多くない?(息切れ)

2018年夏ドラマ初回感想①

冷房をガンガンにかけた部屋で録画したドラマを延々と見る、そんな夏が今年も来てしまった。海や山などに全くいかず、只々家にいるだけの夏が。

 

前クール(2018春ドラマ)で3,4話視聴後に、一言レビューという名の全く一言では収まらなかった記事をあげましたが、ドラマって最初から見たほうが面白いじゃないですか。一話から見てるからこそ感じる味わいもあるじゃないですか。

というわけで駆け足であげてみました。今ならまだTVerで間に合うので、参考にはならないだろうけど判断材料の一つにしてくださったら幸いです!

 

※あくまで一話を見た段階のざっくり感想

※個人的に刑事・医療ドラマは不得意(ここ大事)

※テレ東、テレ朝系のシリーズ枠はみない(ここも大事)

 

 

絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』(フジ/月9)

【特殊捜査班にいた山内(横山裕)が失踪した相棒・桜木(上戸彩)の行方を追っていたところ、「資料課分室」に左遷されてしまう。表向きは掃き溜め部署だが、裏では「ミハンシステム」というAIを駆使し、これから起こる犯罪を未然に防ぐ部署だった。】

 

・「絶対零度」シリーズ初見勢には冷たい初回

沢村一樹から感じる安定感と「これ絶対テレビ朝日じゃん!」感

・初回90分拡大がひたすら長い

 

絶対零度シリーズ3作目にして初の月9。今シリーズは2010年、2011年に放送されているものの、私は今回が初めて。「上戸彩が主演していた刑事モノ」という前情報しかない状態で見ると理解するのが難しかった。同時に「絶対零度って誰もが知ってる人気シリーズだったのか」と思わされた。上戸彩とヨコが仲良かった事くらいしか分からない。

個人的に「月9」はド派手な作品であってほしいという思いが強いため、終始漂っていた陰気なムードにこちらも鬱々。潜入捜査や本田翼のコスプレ捜査などあの手この手を使って調べるものの、どうしても前作のコンフィデンスマンJPが頭を過ってしまいワクワク感があまり感じられなかった。まあ散々言ったけど、兎に角なげえ!!通常枠になってどう話を収めていくかが肝だと思う。

頼むから前シリーズのおさらい…的な映像、三話くらいまで冒頭に流してくれません?

 

『義母と娘のブルース』(TBS/火10)

【仕事一筋の亜希子(綾瀬はるか)が結婚したのは、小学生の娘を持つ良一(竹野内豊)だった。不器用な亜希子はあの手この手を使って、娘・みゆきの心を掴もうとする】

 

・なかなか緩い出だし

・フワフワしてる竹野内豊は可愛い

 

まさかの四コマ漫画が原作。それを知るまでは非常にプツプツした感じが気になっていたけれど、逆に四コマ漫画を1時間ドラマの題材として扱って成立させているのが凄いと思った。しかし想像以上にふわふわしている作品で、一話で離脱しそうな人は多いんじゃないかと。

娘が小学生から成長してからが話の本筋らしいし、民放ドラマ久々の佐藤健に期待したい。低い天井が好きそうな竹野内豊、可愛いです。

 

『高嶺の花』(日テレ/水10)

【婚約破談になった華道の名門の娘・月島もも(石原さとみ)が恋をしたのは、「ぷーさん」があだ名の超平凡な自転車屋の店主・直人(峯田和伸)だった!】

 

・非日常の中に垣間見える日常が尊い、This is 野島ワールド

野島伸司が出会った「峯田和伸」という救世主

・センター分け+ピアス+華道家千葉雄大=最高

 

最初に一言。私は野島伸司が大好きだ!!!(つまりひいき目!)

しかし野島脚本を純粋に楽しいと思える世の中っていうのは、この平成が終わる時代にはもういないのかもしれないなぁと勝手に思っていた。それを野島もどこかでわかっているのか、冒頭20分くらいは全く野島カラーを感じず。そもそも主演がさとみだし、これじゃ只のカオスなドラマじゃないかと。小日向さん言ってることよくわからないし。

しかし後半からのTHE野島ワールド!!!この平成が終わろうとしている2018年にも、俺たちの野島はコンプライアンスや世評なんて関係なく己の世界観を地上波で描こうとしているんだ!!と、野島好きとしては少し興奮した。峯田和伸のラブミーテンダーからの朝ごはんのシーンは最高に野島脚本ぽかった。主演は月島ももだけど描きたいのは直人で、峯田和伸という人は今の野島伸司が欲しくてたまらなかった逸材なんじゃないかと勝手に思っています。

かと言いつつも、非常に癖のある第一話。でも「ワンチャンあると思ってる?」という石原さとみは最高だしセンター分けの千葉雄大も最高だから、まずはそこきっかけで見るのもいいのではないでしょうか。

 

『グッド・ドクター』(フジ/木10)

【小児外科の研修医となった湊はコミュニケーション能力に問題があるサヴァン症候群の青年だった。偏見や反発にさらされながらも、彼は一人前の医者として成長できるのか】

 

・クセのない良作の予感

山崎賢人がひたすら上手い!!!!

 

月火水と私の心の中の千鳥・ノブが「癖が強いんじゃ~~!!」と叫び続けていたのだけど、ここにきてやっと収まった感。

とにかく山崎賢人が上手い!彼は本当に何でもできると確信した初回。医療ドラマとして考えると、あの緊迫感やスカッと感は少ないというかほぼ無いのだけど、今作はあくまでも湊の成長と周りの医師たちが今後どう変わっていくかを描いていくんじゃないかと。医療ドラマも結構飽和状態かなと思っていたけど、新しい切り口の作品だと思う。上野樹里のキャラクターがとてもいいので、今後どう関わっていくかが楽しみ。

 

『チア☆ダン』(TBS/金10)

【幼い頃に名門「JETS」に憧れていたわかば(土屋太鳳)が転校生の汐里(石井杏奈)に誘われ、チアダンス部を設立し全米制覇を目指す】

 

・夏、夏、夏~~~~!!!!

・意外と女子高生に見える土屋太鳳

・福井弁という今作最高のスパイス

 

夏ドラマに持って来いの爽やかさ溢れる作品。もうこの手の作品は失礼ながら脚本とか演出よりも、キャストの成長を見守るのがメイン!可愛い女の子たちがああだこうだ言いながら頑張る姿って最高だなぁと思います。

放送開始前から散々言われていた「土屋太鳳が女子高生に見えるのか問題」だけど、これが見える!!失礼なのは百も承知で言うけど見える!!しかし土屋太鳳・新木優子(太鳳の姉)・広瀬すず新木優子の先生)が同じ画面にいたときは、さすがに時空が歪んでいた。こけたくないから実力派女優を主役に据えたくなる気持ちもわかるけど、あまりこけそうにない王道な作品だからこそ無名の新人をドドーンと主役においてみても良かったんじゃ。

今作の魅力は何といっても「福井弁」!!標準語にはない温かみとか大らかさがあるのに、一点すると無神経なほどの刺々しさを持っていて、それがまた作品を何倍も面白くしている。石井杏奈ちゃん演じる革新的な東京のJKと保守的な福井弁のJKたちという対比も非常に良い。太鳳が飼っている犬と同じ「太郎」という名前のオダギリジョーもこれまた良いです。

 

『サバイバル・ウェディング』(日テレ/土9)

【寿退社したその日に婚約破棄をされたさやか(波留)。何もかもなくした彼女は、ドS編集長(伊勢谷友介)に拾われ「半年以内に結婚しないとクビ」と言われてしまう】

 

・恋愛指南×ファッション業界のマーケティングというイマドキ感

・まだメイン二人が波に乗れていない感

・ただただ吉沢亮が可愛いやん

 

韻踏んでみました。

かつての「私結婚できないんじゃなくて結婚しないんです」のような恋愛指南コメディ。伊勢谷さんがする恋愛指南は的を得ているところも多々あり、気ままなアラサー独身OLは所々胸が痛くなった。

しかしテンポがいい脚本なはずなのに、個人的には間延びした印象をうけた初回。脚本のテンションにメイン二人が追いついた時に、また何倍も面白くなる作品なのかなと思います。それでも吉沢亮は可愛い、だからいいか。風間君演じる摩訶不思議なクソ元カレが今後どう動くのかも気になる。

 

というわけでざっくり初回!

今の段階で相当癖が強いクールだなぁと思います。あまりドラマを見ない人にも見やすいのは「グッド・ドクター」や「チアダン」あたりですかね。個人的には野島好きなんで「高嶺の花」に期待しています。

 

ちなみにテレ東系深夜「GIVER」「インベスターZ」も見ましたが、なんともまぁテレ東らしい深夜だなという感想。GIVERは見るかもだけどインベスターは落ちちゃうかな。「バカボンのパパよりバカなパパ」はひたすらなげえ!!という感じです。後半も頑張ってあげます。よろしくお願いします。

最終回目前!今からでもわかる「あな家」のあらすじを書いてみた

 

asunako-hakusho.hatenablog.com

 


私は頭を抱えていた。
前回「モンテ・クリスト伯」をより多くの人に見てほしいが為に記事を書いたのはいいが、ネタバレになってしまう故に内容についてはあまり書くことが出来なかった。結局私があの記事で伝えられた事は、おディーン様の新曲「Echo」がものすごく良い曲だということだけだったのではないか。

こんな私でも作品自体の良さを伝えられる面白いドラマが、他にあるんじゃないか。そう考えた。あった。

 

 

あなたには帰る家がある(TBS金曜10時)

www.tbs.co.jp

 


前回書いた「モンテ・クリスト伯」に負けず劣らずの面白さがある「あなたには帰る家がある(通称:あな家)」もしあまりドラマを見ていない人に今期のオススメを聞かれたら、私はまずこの作品を挙げるようにしている。

もう何番煎じだと言われようが「不倫」という題材は人を夢中にさせる要素があるし、脚本のテンポも良い。役者のお芝居もそれはそれは見事だし、普段あまりドラマを見ない人でも見やすい作品だからだ。見た人によって受ける印象が違う「体感型ドラマ」な点も面白い。

 

しかしそうは言えど、現段階で既に9話まで放送済み…何なら今日は10話だ(書くのが遅い)

面白そうだけど今からついていけるはずがない…という方に向けて、僭越ながらこれさえ読めばバッチリ的な勢いのあらすじを書かせていただこうと思う。

 

あらすじ

 

 

玉木宏木村多江が不倫する

 

 

 

 

以上!

 

 

 

 

おいおいこんなんでわかるわけねえだろと思った方々。大丈夫。「あな家」はこれさえ押さえておけばついていける。

あらすじもスーパーウルトラ簡素だが、登場人物も押さえておくのは一先ず4人だけでいい。

 

主要人物

佐藤真弓(42/中谷美紀)

旅行代理店「ラクタビドットコム」に勤めていたが、妊娠・結婚を機に退職して結婚13年目の専業主婦。家事は適当でガサツだが、弱音は吐かないなど強気なところがある。(Wikipediaより)

 

今作の主人公。四人の中で唯一の常識人とも言える。

 

浮世離れした美しさを持つ永遠の綺麗なお姉さん・中谷美紀が中学生の母親役なんて…と始めは思っていたし何なら1、2話までそう思っていたけれど、今ではすっかりハマリ役。テレビ前で我々が「ハァ??」と思うことは、大体彼女が代弁してくれる。真弓の言葉にテレビ前でついつい「わかるわ…」と言っちゃう人も多いだろう。


ちなみに、多くの人の心に刺さる真弓の台詞の中で私が一番好きなのは、朝から家に乗り込んできた不倫相手(木村多江)に向かって言った「あんた頭おかしいよ」頭おかしい奴が目の前にいたら言ってみたいですね。



佐藤秀明(39/玉木宏

 住宅販売会社「渚ホームズ」勤務。几帳面で細かいことを気にする性格。映画とメンチカツが好き。(Wikipediaより)

 

バカ。

本当にバカ。ロマンチストバカ。玉木宏の顔をしたバカ。

 

 

担当している客の奥さん(木村多江)に手を出すという最低な行為を犯してから地獄まっしぐら。バレてからは猛省し家族再生の為に復縁に挑むが、何と言っても詰めが甘い。バカだから詰めが甘い。

玉木宏なのに全く格好良くない役柄だが、玉木宏だからこそ個人的には憎むに憎み切れない罪な男である。ちなみに「あなたには帰る家がある」という表題だが9話時点で秀明が帰る家はなく、小さなアパートを借りている。

 

 

那須田太郎(47/ユースケ・サンタマリア)

早瀬中学校の国語科の教師。二世帯住宅に建て直そうと、夫婦で秀明の会社のモデルハウスを訪れる。(Wikipediaより) 

 

屑。

 

世の中の嫌な奴を一つに集めたら、茄子田という男になるんじゃないかと思う。

「価値観が古代時代くらいで止まっているのでは…?」と疑うほどの男尊女卑思想。亭主関白で横暴、更にドン引きな点が妻に夜生活を強要しているということだ。ど、どんだけ〜。セクハラ・パワハラモラハラとハラハラハラ!ハラスメントと辞書で引いたら、意味の所に茄子田と記載しても良いレベル。

 

ポイントは茄子田の職業が「教師」だということ。恐らく彼が一社会人として会社という組織に所属していたならば、こんな類のモンスターは誕生していなかったのではないだろうか。ちなみに、茄子田の学校の修学旅行を担当しているのが真弓。真弓にとっても秀明にとっても、茄子田は「大切なお客様」なので尚更つけあがっていると言う訳だ。


そんなモンスター・茄子田だが、後半からは妻・綾子へのどうしようもない愛情や、意外に可愛げがある奴だという事が判明する。可愛げがあると言っても毛が生えた程度で実際は1ミリも可愛くはないけれど、茄子田が改心する日は来るのだろうか(そして十話を見て土下座する私)

 

 

茄子田綾子(43/木村多江)

家庭的で料理上手な美人。「家庭を壊すつもりはない」と言いながら、秀明の携帯に頻繁に電話をしてくる。秀明が自分を拒絶するのは真弓のせいだと思っていて、秀明にしつこく付き纏う。(Wikipediaより) 

 

 

化け物。

申し訳ないが化け物。

 

大雑把な真弓と対比する存在なのが綾子。中谷美紀の対抗馬として木村多江を持ってくるところに抜群のセンスを感じる。

主婦として家事に従事し「良妻賢母」を絵に描いたような人物として描かれていたが、時にはその女性らしさが暴走し、我々の予想の遥か斜め上を行く事も多々あり茶の間に爆笑を巻き起こす。

例えばBBQで手作りソースを用意したり、お手製のメンチカツを真弓の職場に差し入れしたり、ケジメをつけようとした秀明が綾子を呼び出した際にはピクニックのお誘いと勘違いしたのか、トルティーヤを作ってきた(さすがの秀明もこんなものをクルクル巻いている場合じゃないと言っている)こんな厄介な女に引っかかるバカなんているのか。いた(佐藤秀明に戻る)


先述した通り、後半では朝7時から佐藤家に乗り込み佐藤家の娘(麗奈)の前で「貴方のお父さんと私、とても愛し合ったの!」と叫び出したり、秀明の新居に行った際に勝手に合鍵を持ち出し不法侵入するなど暴走っぷりが加速してきた綾子。なんなら犯罪だ。

9話では自分の母親が危篤状態にも関わらず「秀明さんが実家に送ってくれたら母に会う」と駄々をこねていて本当にどうしようもない女だと思った。絶対近くにいてほしくない。

このどうしようもない女は過去に一癖あるらしく、10話では綾子の生い立ちが明らかになる。

 

 

「不倫」の先にあるもの

 

題材は不倫だが、このドラマの本質はそこではない。

現に2・3話で秀明の不倫は早々に発覚するし、中盤で真弓と秀明は離婚する。不倫はあくまでもきっかけに過ぎず、その後の家族の物語を描いている。


今作は随所に出てくる「男女での考え方の相違」が面白い。

 

例えば佐藤家の場合。
お互いを「パパ」「ママ」と呼び合い、ベッドこそ同じもののそういった生活は一切無かった。秀明はともかく、女と見られていないと自覚した真弓は危機を感じ、冒頭では普段の立ち振る舞いや家事などを努力するシーンがあった。「大事な家族」ということに意識に変わりはない二人だが、少なからずも真弓には秀明に対して未だそういう気持ちがあったのだ。

 

そこに現れたのが「綾子」。自分の妻にはない綾子の色気や女らしさに、バカで単純でロマンチシズムな秀明はまんまと恋に落ちていった。家族を壊したかったわけではない。綾子と恋をすることも家庭円満の秘訣だと考えていた秀明なバカ。あ、違うバカな秀明。

 

しかし真弓より年上の綾子に、なぜ未だ女としての「現役感」があるのだろうか。

それは40を超えても母となっても尚、綾子は「女」として扱われているからだと思う。しかも一番近い異性である夫から。

皮肉にも秀明が惹かれた綾子の女らしさの理由は茄子田にあり、逆を言えば年々表面化する真弓の女らしさの欠如は秀明にも一因があるということだ。

 

不倫発覚後も二人のすれ違いは続く。

秀明は自分の行いを反省し、家族の為に良い夫になろうとバカはバカなりに涙ぐましい努力をしていた。真弓は真弓で中学生の娘を思い、このまま秀明と家族を続け馬車馬のごとくコキ使うのも悪くないな!と思っていたが、ある事を機に離婚を決意。どんな形になっても真弓と「家族」でいることを選んだ秀明に対し、真弓は秀明と「夫婦」でいることに限界を感じた。家族でいることや娘の大切さよりも、かつて愛した秀明への悲しみの方が勝ってしまったのだ。

 

「悔しいけど、私って自分で思ってたよりずっとパパのこと好きだったんだなって」

「だからパパ、私傷ついたよ。すごく傷ついた」

 

怒るのではなく涙をこぼしながら秀明に思いを打ち明ける真弓。秀明は真弓を抱きしめて謝るも、二人が戻ることはなかった。真弓と秀明、二人の考えの違いが顕著に現れたシーンだったと思う。

 

「あな家」のエキセントリックさは言わばファンタジーかもしれないが、登場人物の感情描写は緻密で非常にリアリティがある。山本文緒氏の原作の力も勿論だが、ドラマ制作前に100人以上の女性の意見をヒアリングしたらしく、それがかなり効いている。

原作とは登場人物の年齢や結末も全く違うそうで、特に今作の綾子の暴走っぷりはドラマ版の方が凄いとか。原作を読んだ方でも一味違った展開を楽しめるドラマに仕上がっている。

 

この広げに広げまくった話、果たしてあと二話で終わるのだろうか…?!と思いつつ、すっかり毎週金曜日が楽しみになった。個人的には有名な祈祷師とかを雇って、綾子を祓わない限り佐藤家に幸せは訪れない気がす(綾子は怨霊ではない)しかしもう真弓と秀明の力、いや人類の力で彼女を止めることは不可能じゃないだろうか。

 

最終回まで残り二話、なんなら本日10話放送!「あな家」ならではの癖のあるエキセントリックな結末を期待したい。superflyと共に「♫地獄へ落ちてゆけ〜!!!」 という準備は既に出来ている。