あすなこ白書

日本のドラマっておもしろい!

彗星のごとく現れた期待のトンチキ枠「黄昏流星群」※ネタバレしかない

ドラマ実況アカウントをしていて思うのは、「自分が好きな作品と実況映えする作品は必ずしも一致しない」ということだ。例えば、『昭和元禄落語心中』を見るときは画面以外をよそ見する余裕なんてないし、『獣になれない私たち』もまずは物語をストレートに楽しんだ方がいいと思う。そもそも「実況映えする作品」とは、何なのだろう。


私が思うに、「ドラマを見ているだけでは物足りず、作品に何か言わずにはいられなくなるとき」が一つの基準だ。更にこの上に位置づけされるのが「視聴者にツッコミされるために生まれた作品(トンチキ枠)」である。不倫ドラマなど元の設定からアレな作品によく見られ、「奪い愛、冬」や「僕のヤバイ妻」はその枠の代表選手だ。トンチキ枠は、視聴者のツッコミがあってこそ完成するといっても過言ではない。
そのトンチキ枠の中でも私が度々話題に出すのが、テレビ朝日の「明日の君がもっと好き」だ。どんな作品かは未だに私もよくわかってはいないが、作中の様々なぶっ飛び描写が一部で話題になった。最初は文句を言いつつ視聴していたものの、とっちらかった内容が物凄い速度で解決した最終回にはある種の感動を覚えたし、FFの枠を超えてやいのやいの言う土曜の夜は何だかんだで嫌い…じゃな…かった(ちなみに今作はDVD化すらしていない)

 

このトンチキ枠に、今シーズン新規参入してしまった作品がある。フジテレビ木曜22時「黄昏流星群」だ。

 

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リアルタイムで見たのは三話が初めてだったが、初回から「トンチキ枠」への並々ならぬ才能を感じていた。局も制作陣も役者も違うのに、作中に漂う雰囲気があの「明日の君がもっと好き」を何処となく彷彿させたからだ。一人で見た後に「私何見ているんだろう…」と悶々とした気持ちになるのも、あの明日君以来のことだった(褒めていない)

 

視聴率がおかしいのか私のTLがおかしいのかは不明だが、黄昏流星群TL視聴率は60%~70%くらいあり、木曜日の22時に私のTLに浮上していた人はほとんど黄昏流星群を見ていた気がする。すると後日、

 

「黄昏流星群おもしろいらしいのに見てなくて後悔した…」

 

というツイートをちらほら見かけた。いや違うんだそういうのじゃない。まじでそういうのじゃない。

 

そのツイート一つ一つにリプライを飛ばそうと思ったが、それはそれで怪しいし私が黄昏流星群をゴリ押ししたいのかと思われたら困るので、ブログを書くことにした。黄昏流星群は面白い作品ではない。見ないことを後悔するような作品でもない。

どちらかというと、いや紛れもなく「おかしい」作品なのだ。

1.真面目な作りなのにおかしい

トンチキ枠に該当する作品は、そもそもの装いが他と違う。大体タイトルやメインビジュアルでその独特な雰囲気を感じ取れるものだが、黄昏流星群にはそれがない。
主演は佐々木蔵之介。公式は「人生の岐路にたたずむ男女の切ないラブストーリー」と位置づけし、主題歌は平井堅佐々木蔵之介世代の大人のラブストーリーと聞くと、「最後から二番目の恋」のような作品かと思うがこれが全然違う。ぶっちゃけ「最後から二番目の恋」は見たことないがきっとこういうのじゃない。
 
しかし、作品の骨組み自体は至って真面目だ。キャストもスタッフも大真面目だ。キャストインタビューで栞役の黒木瞳「登場するすべての恋愛の、美しさと切なさをお楽しみ頂けたら嬉しいです」と語っているし、春輝演じる藤井流星「今まではコメディー作品への出演が多く、大人な恋愛ドラマは初めてです」と言っているが黄昏流星群も間違いなくコメディだと思う。
 
しかし、我らが佐々木蔵之介だけは今作の異様な雰囲気に早くも気づいていたようで
 
真璃子も娘の婚約者、日野春輝(藤井流星)と禁断の恋に落ちていくことになるし、娘の美咲(石川恋)もいろいろあって。ストーリーの概要だけ聞くと“ありえないやん、これなに?”ってなるかもしれませんが(笑)。
(公式HPより)

「ありえないやん、これなに?」

 

2.背景があからさまなCGでおかしい

 
黄昏流星群と検索すると、高確率で「合成」や「CG」と出てくる。視聴者を騒然とさせたのはトンチキストーリーではなく、その背景。記念すべき第1話にびっくりするほど雑なCGをぶつけてきたからだ。
 
問題はスイスで起こった。
銀行から突然の出向を命じられ絶望に陥った完治は、家族に黙ってスイスのマッターホルンに向かう。そして運命の女性・栞に出会い、完治は恋におちる。一度は意気投合したものの、気持ちを抑えきれなかった完治の突然のキス(まあまあのホラー映像)に栞は驚き拒絶。朝になると栞は姿を消していた。後悔した完治は、あてもないスイスで彼女を懸命に探す。
 
 
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©️まんぷく

 

3.主要人物がもれなく皆おかしい

 

素人顔負けのCGもさることながら、何だかんだ言ってもこの一言につきる。「セカンドライフに差し掛かった男女の切ない恋」と銘打っているが、大前提として瀧沢家は皆どうかしているということを頭の片隅に置いていただきたい。

 
 

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まずは一家の大黒柱・完治。
仕事一筋の完治は銀行員として恥ずかしくない人生を送ってきた、という設定もつかの間。スイスで栞にフラれ意気消沈するも、出向先の子会社でまさかの栞と再会。四話放送終了段階の今、「出向も悪くないな」とロマンティック恋の花咲く浮かれモード真っ只中である。
その完治を怪しいと疑う妻の真璃子(中山美穂)。娘にも友達にも絶対浮気してるよ!と言われ相手は銀行時代の部下・篠田(本仮屋ユイカ)ではないかと探るが、真璃子も違う男に心惹かれる。相手は娘の婚約者・春輝(藤井流星)!完治の比にならないほどタチが悪い。ミポリンの方が断然悪い。しかも徐々に惹かれるのではなく、割とすぐ好きになる。イケメンだから仕方ないのかとは思うけど、いやそれでも、それでもそこに理性ないのか。ちなみに真璃子のロマンティック恋の花咲く浮かれモード時には中島美嘉が流れ、ハーレークイーンで小説を出せるんじゃないかレベルの妄想が始まる。
 
母娘三角関係の頂点にくる春輝は有能なイケメン弁護士!唯一の欠点はマザコン!…と言いたいが、人様の家に黙って入ってくる癖があるので私としてはそちらの方がヤバイと思う。
 
親子の三角関係ってどこの層が喜ぶんだよと思う程にベストオブいらない設定なのだが、恐ろしいことに今作ではこの誰得三角関係がもう一つ存在する。栞×完治×栞の母だ。もう一度繰り返す。栞の母だ。
 
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栞(黒木瞳)は倉庫会社の食堂で働きつつ、一人で痴呆症を患う母の面倒を見ている。結婚はしておらず、親の介護で自分を犠牲にし続けてきた女性だ。完治との登山デートの時も山には登れず、急に病院から呼び出されてしまった。その時に完治と栞の母が初めて会うわけだが、そこで栞の母のボケが炸裂!完治を自分の夫と思い込み、「あなた〜会いたかったわ〜」と突如色めき出す。ここまでは微笑ましい光景だったが、
 
「ほら〜ここもさすってくれたでしょ!!」
 
と自分の胸に完治の手を無理やり押し付けだす。地獄絵図かと思った。願わくばこの下りは二度と出てこないでほしい。
 
 
父は旅先で出会った女と不倫をし、友達のように仲が良い母は自分の婚約者に恋をして…となると一人娘の美咲(石川恋)が可哀想…!!
 
と思うが、美咲も美咲で何かあるらしい。それが突如判明したのも第四話だった。春輝も「美咲には別に好きな人がいるかもしれない」と漏らしていたし、当の美咲本人も首元のキスマークを見て意味ありげに微笑んでいた。もし美咲まで只ならぬ道に走っていたら万引き家族もドン引きの不倫家族誕生だ。そのキスマークは誰がつけたんだよ美咲!!(ちなみに母はそのキスマークは春輝さんがつけたの…?と悶々とする)
 
この疑惑の真相がひょっこり顔を覗かせたのも、第四話のラストだった。
遂に完治と栞はホテルに向かう。緊張した面持ちでエレベーターを待っていたら、何と中では若い女と初老の男性が熱烈なキスを交わしていた。
 
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人が入ってきたことに気づき、キスを辞めた年の差カップル。しかしよく見ると…その女は自分の一人娘・美咲だった。
 
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まさかの美咲?!隣のジジイ誰だよ!!!そんなジジイこちとら知らねえぞ!!!知らねえぞ!!!!と思っていたら、その相手が誰もが知る適当おじさんこと高田純次だったのだから荒ぶっていた我々Twitter勢も一気に黙る(ちなみに高田純次は脈略もなく初登場)。トレンド検索が「黄昏流星群 CG」から「黄昏流星群 高田純次」に変わった瞬間だった。
そこで美咲も完治との栞の姿に気づき、二度目の地獄絵図で第四話は終わる。第五話ではトンデモ一家+婚約者で旅行に行くらしいが、父娘どんなメンタルで旅行に行くんだよと問いただしたい。というか高田純次はどこから出てきたんだよ!!
 
***
 
以前、このようなマシュマロ(匿名質問)をいただいた。
 

Q.よく話題に出る『明日の君がもっと好き』が気になります。そんなに面白い作品だったのですか?

 
何度も言うが、明日の君がもっと好きも「面白い」ではなく「おかしい」作品だった。あの当時TL上にいた人達に「明日君は見た方がいいか?」と聞けば、大抵の人が「見なくて良い」と答えると思う。このマシュマロを見て爆笑すると同時に、我々のせいでいらぬ弊害を生んでしまったと反省した。
 
では今作はどうだろう。
 
 

Q.黄昏流星群は見た方が良いですか?

 
 
 
見なくていい。
 
 
 
 
見なくていいが、もしこれを読んでいるあなたが木曜日22時にTwitterに来てくださるのならば、私は心の底から歓迎する。