あすなこ白書

日本のドラマっておもしろい!

「隣の家族は青く見える」を兎にも角にもオススメしたい

私事だが約一ヶ月半のニート生活を終え、2月から再び働き始めた。その前まで不定休だったのが数年ぶりに土日休みのフルタイムで働くことになり、多くの人が感じる金曜夜の高揚感や、サザエさんが齎す焦燥感が分かるようになった。しかし、そんな私が一週間で一番楽しみにしているのは、金曜の夜でも土曜日でもない。ましてやサザエがやってくる日曜日でもなく、それは木曜日。「隣の家族は青く見える」が放送している木曜の夜だ。

 

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今回の#となかぞ(長いので略)は私のTL上では見ている方が非常に多く、毎回トレンドにも上がるのだがハチャメチャに視聴率が悪い。前作のゆがみより悪い。恐らく私みたいに録画勢やTVer等で視聴している方が多いのかもしれないが、も、もしかしたらこんな素晴らしい作品をご存知ない方もいるのかもしれない…!!と思い、今回に至った。
私がオススメした友人の3人のうち2人がどハマりしているので(母数が少ないのはさておき)未視聴の方には是非見ていただきたい。


まず脚本を担当されている中谷まゆみさんについてお話ししたい。


中谷さんと言えば、前作は私の大好きな石原さとみ主演の『地味にスゴイ!校閲ガール』で、かつての『WATER BOYS』シリーズを手がけていた御方だ。中谷さんはフジテレビ木曜22時枠に非常に縁がある方で、柴門ふみ氏原作の「お仕事です!」や同じくさとみ主演の「ディアシスター」そして…あの「ラストシンデレラ」も中谷さん脚本である。あのラストシンデレラ、私が再放送含め2度沼った不朽の名作、あの、ラストシンデレラだ。

 

中谷さんの脚本はテンポが良く、嫌な複雑さがない。内容はストレートなのに、じわじわと心に来るような台詞が多い。登場人物が複数いてもオムニバス小説のように各々のキャラクターを立たせ、それを一つの話に上手に織り混ぜることが出来る。
#となかぞってどんなドラマ?と聞かれると「妊活の話」と言うだろうが、妊活は今作が掲げるテーマの内の一つ。コーボラティブハウスという集合住宅を舞台にした「4組の家族の物語」なのである。


メインは深キョンと松ケンが演じる「五十嵐奈々・大器」夫妻。
深キョン×松ケン夫婦といえば、大河ドラマ平清盛」以来2度目の夫婦役。実年齢と同じく、奈々(35歳)大器(32歳)の姉さん女房だ。スキューバーダイビングインストラクターをしている奈々に大器が一目惚れし、結婚。マイホーム購入をきっかけに子作りを始めてみると一年以上経っても出来やしない。不安に思った奈々は大器と共に産婦人科に向かうが、早々に医師から「不妊症」と告げられてしまう。奈々と大器は戸惑いつつも悩んだ末に妊活を始めるところから、物語は始まる。

 

深キョンは何を演じても可愛いが、今作の奈々は凄まじく可愛い。女優といえば私は石原さとみが大好きなのだが、心のノートの「来世に生まれ変わりたい有名人」のところに石原さとみと同じく深田恭子と書こうと決めたくらい可愛い。深キョンと同年代や近い歳で活躍されている女優さんは沢山いるが、深田キョンだからこそ出来た、今となっては深田恭子無しには考えられないベストキャスティングだと思う。

 

 そして同じくどハマりしているのが大器役の松ケン。松ケン演じる大器も松ケン自身が持っているのであろう人柄の良さが溢れているというか、もう駄々洩れしている。
初回こそ数々の検査に戸惑い無神経な発言もしていたが、回を増すごと妊活への理解を深め、良い旦那っぷりが炸裂しているのだ。大器の半分は、というかほとんどは奈々への愛で構築されている。

 




私も毎回この類のツイートをしていて、恐らくドラマの最終回では「日本中皆んな松ケンがいい」と言いだすんじゃないかと自分でも思うし、もう言う。日本中皆んな松ケンでいい。松ケンがいい! 
アンチヒーローや何かと問題を抱えた主人公が登場する作品が増えている中、#となかぞの奈々・大器夫妻は好感度抜群で思わず応援したくなる二人。毎週自分の事のように幸せを願わずにはいられない夫婦なのである。

 

しかし一口に「妊活」と言っても、二人が置かれている環境は中々酷なもの。
子供がいないのにも関わらず、大器がおもちゃメーカー勤務の為に部屋にはおもちゃが沢山あるし、大器の妹の琴音はできちゃった結婚。勿論妊活していることを周りにも言えず、高畑淳子さん演じる大器の母には「あんた達の子供が早く見たいわぁ~」と言われ、まさに困難の役満状態だ。
他の面々はというと、平山浩行×高橋メアリージュンの「子どもがいらない事実婚カップル」や眞島秀和×北村匠海の「同性カップル」、そして小宮山一家がいる。言うまでもなく、私が沼った原因はわたさくと言われる同性カップルだ。沼の原因なので少し触れておく。

 

正確に言うと、朔を演じる北村匠海くんに沼った。詳細は割愛するが#となかぞ放送前に見た『勝手にふるえてろ』で沼が見え、一話で見事に沈み、気が付いたらDISH//のCDを購入していた。お相手の眞島さんは、私の中では「残念なイケメンばかり演じるイケメン」という印象でやっと普通の人の役がきたのか…!と素直に嬉しかった。放送済みの6話では仄かにマザコンの香りがするし間違いなくマザコンだが今作の眞島さんは普通にいい人そうなので安心している。

 

公式が呼ぶ「わたさく」とは、舞台となったコーポラティブハウス建築士・渉と、バー店員・朔の男性同士カップルのこと。ここもオサレ事実婚カップルと同様、当人達が幸せそうだから問題ないと思っていたが、中々大変なことになっている。

ナイスバディで且つ「得意料理は肉じゃが」と宣言した橋本マナミが二人の仲を引き裂こうとしたり、渉の母が早く結婚しろと詰め寄ったり、セクシュアリティに対する各々の見解の違いで本人たちも度々衝突する。当事者でないとわからないことだろうが、このセクシュアリティに対する考えの不一致はかなり致命的な問題だ。保守的な渉に対して今時な考えの朔。対称的な二人だが、朔の物怖じしない本質を真っすぐに捉えた発言は渉じゃなくとも心に響く。
放送済みの第六話で「事実婚だと思えばいいじゃない」と言ったちひろに対して、「好きで事実婚を選ぶのと、事実婚しか選べないのは違うんだよ」と返した朔の言葉には考えさせられた。
誰に対してもフラットな世界のように見えて決してそうではないのが世の中。今期では『女子的生活』や今期一番の摩訶不思議ドラマ『明日の君がもっと好き』でもLGBTのことを取り扱っており、昔のようにタブー視されることは減った。しかし、彼らが住みやすい世界なのかと言われるとそうとも言い難い。今の時代、まだまだ不条理な世の中で彼らがどういった未来を選んでいくのだろう。いろんな意味で目が離せない二人だ。

さらっと言ったが最後の小宮山一家が相当根が深い。商社マンの夫と綺麗な妻、可愛い子供…が表の顔。実は夫は求職中で妻は承認欲求の為にインスタに奮闘しているという非常に強烈な家庭だ。先ほど「友達3人にすすめたら2人ハマった」と言ったが、一人が初回リタイアした原因がここ。小宮山さん家の強烈すぎる奥様だ。

TLでは必ずと言っていいほど悪い意味で小宮山さんの名前があがる。インスタ大好きおばさんだけならまだしも、彼女には相当古風な価値観が根付いており、それを他人に押し付けるのだ。

「女は子供も産むのが普通」「同性カップルなんて子供に良くない」と腹の中で思うならまだしもまだしも、本人達にいってしまうのだから相当タチが悪い。
友達には「必ずスカッとジャパンされる日がくると思うのでその日までしばし耐えてくれよ」といったが、小宮山さんも中々ハートが強い為に何を言われてもめげずにゴーイングマイウェイしている真っ只中。

 

そんな強烈すぎる小宮山さんを演じているのは元宝塚のトップスター・真飛聖さん。私は真飛さんが大好きだ。あんなに御上品な御顔立ちなのに中々下世話な役まで演じられてしまうのだから、本当に素晴らしい女優さんなのだ。皆の敵・小宮山さんだが、彼女は視聴者への反面教師の材料として作られたようなキャラクターだと思う。小宮山さんのようになっちゃいけないと意識させてくれるし、全視聴者の怒りやイライラを全て小宮山さんが背負ってくれている。個人的には、ドラマにおいていなくてはならない人物だと思うし、真飛さんは素晴らしいのでそんなに嫌わないであげてほしい。


ちなみに小宮山さん家の小宮山さん、つまり旦那さんを演じているのは野間口徹さんだ。野間口さんが出ているだけで面白いし、とても癒される。しかし海外勤務が多く子供達の側にいたいから早期退職したというのは分かるが、6話の時点で仕事が決まっていないというのはどうなんだ。しかも次はボランティアの塾講師になりたいとか、本当にそれはどうなんだ…!小宮山さんが良いところに再就職できたら問題は解決するのかと思うが、そう簡単にはいかないし、多分まだ就職できない。


小宮山家は「他人からは幸せそうに見えるごく一般的な家庭でも決してそうではない」ということを暗示させている。そしてそれが、ヒリヒリと痛いほどに伝わる。どうしたら小宮山家の皆んなが幸せになれるのかは検討がつかないが、とりあえず早く、一刻も早く、小宮山さんには就職していただきたい。

 

個性的な面々にキャストも最高、そして脚本も最高。初回を見ていた時、ハチャメチャに面白い作品だと思った。しかし時々入る性教育ビデオのような内容が、この作品の熱をふと冷ますように感じていた。

何かと言うと須賀健太くん演じる大器の部下だ。「主任、〇〇って知ってます?」と切り出し、必ずと言って良いほど性教育知識を披露する。こんなに詳しいやついるのかよ!と思っていた。

 

しかし回が進んでいくと、自分が不妊症や妊活について実は何も知らないことがわかってきた。あんなに沢山の検査をすること、副作用が出る薬を飲まなくてはいけないこと、助成金の条件に年齢制限があること。その時に思った。この作品もまた、世の中に知らせる為に、啓発の為に作られたのだと。そしてこれも思った。 須賀健太くん、余計なやつだと思ってごめんと。君はいるべき存在だったんだ…!

 

渉が同性愛者だということが判明した際に、奈々は「知らないことを知ろうとせずに批判だけするなんて最低」とプンスコ怒り、須賀健太くん演じる部下は大器に「無知こそが、いらぬ偏見や差別を生むんです」と説いていた。女子的生活の時も感じた。私たちは何でも知っているようで、知らないことばかりだ。自分が体験していないこと、自分には当てはまらないことは知らない。知らない事は怖いことだ。だから自分と異なるものを見たら避けたり、排除したり、その対象を奇妙に思う。その何気ない行動がや考えが、誰かを傷つけてしまうこともあるかもしれない。自分だけは違うと思いながらも、心の中には小宮山さんの奥さんが棲みついてる可能性があるのだ。

 

 #となかぞは作品を通して「多様性の提案」をしている。コーポラティブハウスの人々のように、自分と異なる環境に置かれている人が私の近くにも、例えば私の隣の家にもいるかもしれない。ドラマとして勿論面白い作品だが、それだけではなく、作品を通して多くのことを教えてくれ、考える機会を与えてくれる。本当に本当にすんばらしい作品だということを、声を大にしてお伝えしたい。

 

ちなみに、この記事を書こうと思ったのが水曜日。anoneを見ながら書いていたが、ほぼほぼ内容は入ってこず、ひたすらこんなことばかり考えていた。

 

奈々と大器の所に早く赤ちゃんが来ますように。

 

となかぞの視聴率が上がりますように。

 

松ケンみたいな人が500000人くらい誕生して、私のところにも来ますように。

  

アラサー独身の身で人の家庭の幸せを願っている場合じゃないのは百も承知なのだが(しかもドラマの夫婦)、奈々と大器には1話でも早く幸せになってほしいと作品を見るたびに思う。

会社帰りにポツポツと文字を打つ。体は疲れているのに心が妙に弾んでいた。そうか。今日は、私が大好きな木曜日だからだ。